騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□素直になれないのは、きっと……
7ページ/12ページ



「……まったく。よく似た親族だよ、お前らは……天邪鬼というか、思ってることをそのまま言わないというか」

フィアが黙り込んだのを見て、クオンはため息交じりに言った。

その言葉にフィアが顔を上げると、銀の瞳を細めながら、クオンが笑う。

「……あまり、苛めてやるなよ。ルカ、ショック受けてたぞ」

「え……」

普段から、散々な扱いをしているのだから、この程度でショックを受けるはずないじゃないか。

そう言いたげなフィア。

クオンは決まり悪そうに頬を書きながら、言葉を紡いだ。

「……結構、へこんでたぞ?

 "フィアにあんなふうに思われてるとは、想定外だった"って。

 少しも思ってないんだよ。義理だとか、そんな風には。

 あいつが、お前のことを心配してるのは、純粋に家族としてだと思うからさ……

 だからこそ、ショックだったんじゃねぇの?お前に、あんなこと言われて」




―― 義理や義務で傍にいるだけなら、そんなの、余計なお世話だ



自分がぶつけた言葉をの重み。

変化を恐れるが故に吐き出した言葉が、どれほどの痛みを唯一の家族に与えただろう?




「……今更悔やんだって、遅いのに」

どうしよう、とつぶやいて、フィアはベッドに寝転んだ。

そのまま、腕で、顔を覆い隠す。




「……ルカ」

ごめん。

「……ごめんな」

どうして、面と向かっては言えないんだろう。

「…………いつも、ありがとう」

だから、だから。

出来るなら……我儘言っていいなら。



―― 此処に、帰ってきてくれないか……?



「まったく……」

そんなフィアを見て、クオンは小さく息を吐く。




クオンは、知っている。

ルカの親友であり、彼の姿をいつもそばで見てきたから。

フィアを大切に思っていることも、この騎士団を大切に思っていることも。

だからこそ、見逃さなかった。



―― まったく……バカな従弟を持つと、俺が苦労するんだよ。



そういって苦笑いした時の、ルカの心情を。

本当は。

ただただ、ショックだったんだろうと、感じざるを得ない表情だった。



だからこそ、おせっかいだと理解しながら、フィアのところに来たのだ。




 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ