騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□素直になれないのは、きっと……
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「……まったく。よく似た親族だよ、お前らは……天邪鬼というか、思ってることをそのまま言わないというか」
フィアが黙り込んだのを見て、クオンはため息交じりに言った。
その言葉にフィアが顔を上げると、銀の瞳を細めながら、クオンが笑う。
「……あまり、苛めてやるなよ。ルカ、ショック受けてたぞ」
「え……」
普段から、散々な扱いをしているのだから、この程度でショックを受けるはずないじゃないか。
そう言いたげなフィア。
クオンは決まり悪そうに頬を書きながら、言葉を紡いだ。
「……結構、へこんでたぞ?
"フィアにあんなふうに思われてるとは、想定外だった"って。
少しも思ってないんだよ。義理だとか、そんな風には。
あいつが、お前のことを心配してるのは、純粋に家族としてだと思うからさ……
だからこそ、ショックだったんじゃねぇの?お前に、あんなこと言われて」
―― 義理や義務で傍にいるだけなら、そんなの、余計なお世話だ
自分がぶつけた言葉をの重み。
変化を恐れるが故に吐き出した言葉が、どれほどの痛みを唯一の家族に与えただろう?
「……今更悔やんだって、遅いのに」
どうしよう、とつぶやいて、フィアはベッドに寝転んだ。
そのまま、腕で、顔を覆い隠す。
「……ルカ」
ごめん。
「……ごめんな」
どうして、面と向かっては言えないんだろう。
「…………いつも、ありがとう」
だから、だから。
出来るなら……我儘言っていいなら。
―― 此処に、帰ってきてくれないか……?
「まったく……」
そんなフィアを見て、クオンは小さく息を吐く。
クオンは、知っている。
ルカの親友であり、彼の姿をいつもそばで見てきたから。
フィアを大切に思っていることも、この騎士団を大切に思っていることも。
だからこそ、見逃さなかった。
―― まったく……バカな従弟を持つと、俺が苦労するんだよ。
そういって苦笑いした時の、ルカの心情を。
本当は。
ただただ、ショックだったんだろうと、感じざるを得ない表情だった。
だからこそ、おせっかいだと理解しながら、フィアのところに来たのだ。