騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□素直になれないのは、きっと……
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「……よく考えろよ。俺でもわかるぞ、これくらい」
クオンは小さく息をついて、フィアから手を離した。
その言葉の意味を図ろうとするかのように、フィアはクオンを見つめる。
「ルカは……お前の従兄は、義理や義務感で誰かの傍にいるような人間か?」
「!」
フィアは目を見開く。
クオンは追い打ちをかけるように、言った。
「お前のことを心配したり、お前が無茶したりした時に叱るのは、お前の両親を救えなかったという申し訳なさからなのか?」
「…………」
何も、言葉を返すことができなかった。
クオンは、言葉を続ける。
「何より、お前は……本気で……
……否、なんでもない。これは、言う必要ないな」
わざと、言葉を切る。
しかし、クオンの問いかけの先は、フィアも理解していた。
―― 本気で、ルカから離れたいと思っているのか?そこまでルカが嫌いなのか?
本気で、心配されるのを煩わしいと思っているのか?
本気で、何処へでも行ってしまえと思っているのか?
本気で……"大嫌い"だと、思っているのか……?
「思って、ない……」
答えはすべて、NOだ。
わかりきっていた。
わかりきっていたけれど。
―― 怖かった。
"従兄弟同士"であることに、いつまでも甘えていたかった。
それが、本来かなわぬことだと、フィアだって理解している。
本当は、ルカは騎士団の一部隊の長で。
フィアは、あくまでも一介の騎士で。
フィアがルカのことを"様付け"で呼ばないのは、照れくさいから、なんて理由じゃない。
まして、ルカのことを尊敬していないから、というわけでもない。
―― ただ、怖くて。
"ルカ様"と呼ぶことで、自分とルカの間にある何か……
例えば、家族としての絆とか、そういったものが……壊れてしまう気がした。
それが嫌だと、そう思って。
フィアは、ルカに、あんなことを言う。
幼い頃からそうしてきたように、ルカをからかったり、する。
心配されることがうれしかった。
傍にいてくれることが、うれしかった。
……大嫌いだなんて、思っていなかった……