騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□素直になれないのは、きっと……
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ベッドに寝転んで、目を閉じて、思う。

今まで、ルカと過ごした時間を。

ルカにかけられた言葉を。




『無理だって』

『騎士に……ねぇ』

『お前は確かに強いけどさ……』

『……お前が、本気なら』



"本気なら何とかしてやるよ"、と言った時の真剣な顔。

"バレたら、一緒に罰を受けてやるから"と言って笑った、ルカの顔。

"どうして無茶ばかりするんだ?!"と怒鳴った時の、ルカの怒った顔。




「何を、俺は……」

ルカがいなくなったことで、どうしてこうも動揺しているんだ?

フィアは自分に問いかける。



"行け"といったのは、自分だろう?

"義理だけで傍にいる必要はない"といったのは、自分だろう?

"これでようやくアイツを自分という枷から解き放てる"と、ほっとしただろう?



―― そう思うのに。どうして。



「フィア、いるかな?」

不意にノックされたドア。

声で、誰なのかはわかる。

ただ、その来訪者が意外で、フィアは驚いた顔をした。



「……クオン様?」

「あぁ、そうだよ」

「どうぞ。あいてます」

体を起こして、ドアの方を見た。

すぐに、ドアが開いて、クオンが入ってくる。

あいた窓から入った風に、クオンの長い銀髪が揺れた。

クオンはその髪をそっとかき上げてから、フィアに尋ねた。

「……ルカがいないって変な感じしないか?」

「……別に」

そっけなく答えるフィア。

クオンはそのサファイアブルーの瞳をとらえながら、質問を重ねた。

「本当にか?」

来るなり何を言い出すんだ、というような表情でクオンを見据えるフィア。

クオンは苦笑して、言った。

「いや……そうなら、いいんだ」

「…………」

「だけど」

クオンは一つ溜息をついて、うつむいたままのフィアの頭に手を置いた。

「……よく考えてやれ。あいつの言葉の意味を」

「え……」

フィアは顔を上げる。

クオンは困ったように笑って、言った。

「ごめんな。お前らが喧嘩してたってこと、他の奴らに聞いたんだ」

「……そうですか」

興味がない風に、装う。

しかし、それはあまりうまくいかなかったようで、微かに声が揺れた。

「……"義理や義務で傍にいるだけなら、そんなの、余計なお世話だ"だったか?」

「!」

「お前、ルカにそう言ったんだって?」

クオンは小さく笑って、フィアを見つめる。

銀灰色(シルバーグレイ)の瞳に見据えられるが、フィアはすぐに目をそらす。


―― その、理由は……?


 
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