騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□素直になれないのは、きっと……
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「……どういう」



―― どういう、ことだ。



フィアは、その場に凍りついた。

誰もいない。

否、それどころか。

「何も、ない」

室内にあるのは、備え付けられている机とベッドだけ。

どちらかというと散らかっていたルカの部屋とは思えない。

「……どういう、ことだよ」

その場に凍りついたまま、フィアはつぶやく。

「おや、フィア?どうかしましたか?」

不意に、後ろから声をかけられてフィアは驚いた。

そして、振り向くと。

「ジェイド、様……?」

「……?何故此処に?」

不思議そうな顔をするジェイド。フィアは何度か瞬きをして、自分が来た目的を言う。

「いや……ルカに、任務完了の報告を」

「おや、聞いていないのですか?ルカはいませんよ?」

「え」



―― まさか。


フィアの反応に、ジェイドは目を丸くした。

「本当に聞いていないのですか?ルカは……」












「…………」

フィアは、一人で部屋に戻っていた。

静かな室内。

シストは蔵書の整理と言っていた。

アル達、草鹿の騎士は午後は薬草学の試験だと言っていた。

アネットが部屋を訪ねてくることは、めったにない。

つまり、誰も来るはずがない。

「……俺は、何をしてるんだ」

馬鹿みたいだ。

そうつぶやいて、フィアは体を起こした。

「いいって言ったの、俺じゃないか。あいつは、その通りにしただけだ。

 ……ようやく、離れることができた。

 あいつは、こんな小さな国だけで活躍しているようなレベルの騎士じゃない。

 こうして、外の世界を見る機会が与えられたのは、良いことじゃないか」

小さく、つぶやく。

自分に、言い聞かせるように。




―― 言い聞かせる?



何をだよ。

自分に、問いかける。





"ルカは、要請を受けて、先ほど出発しましたよ?雪狼のことは、ヴァーチェの奴らに任せる、と言ってましたが……"




先刻の、ジェイドの言葉を思い出す。

それはつまり、ルカが"あの要請"を受けた、ということになるだろう。



「俺が、言った通りにしただけじゃないか」

何度も、つぶやく。




―― しかし、それを呟くたびに、虚しくなっていくのは、何故だろう……?




 
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