騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□素直になれないのは、きっと……
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任務が終わった。
その、帰り道……
「……なぁ、フィア」
「なんだ?」
言いにくそうに、シストが言う。
「……さっき、ルカに"俺の両親が死んだのは、お前の所為じゃないって"、言ってたよな?それ、どういうことだ……?」
フィアはしばし口をつぐんでから、溜息をついた。
「……ルカ、俺たちの村が竜に襲われた時、すぐに村に帰ってこれなかったことを、ずっと悔やんでるらしいんだ」
「!」
フィアの言葉にシストが目を見開く。
「戻ってきたところで……子供に、何ができたっていうんだ?
だけど、あいつはそうは思っていない……
きっと、義務で、義務感で……俺の面倒を見ているんだろう。
それに甘んじてばかりいた俺が馬鹿だった……
俺が枷になるのなら、もっと早く突き放すべきだったかもしれないな」
"甘えすぎたよ"と言って、フィアは苦笑いを浮かべる。
そしてそのまますたすたと歩きだした。
シストはそれを見て、複雑そうな顔をする。
「……そうかな」
―― 果たして、ルカはそう思っているのか。
シストは、疑問に思う。
ルカの、言葉。
幻滅したような声での、"お前がそこまで馬鹿だと思っていなかった"の意味。
その言葉の真意に、フィアは気づいていないのだろうか……?
「?何か言ったか?」
くるりと振り向くフィア。
シストはゆっくりと首を振って、フィアの隣に戻る。
城に戻ってから……
「……あ、報告行かないとな」
シストが思い出したように言う。
任務が終わった時、それを統率官……つまり、フィアたちにとってはルカに報告に行かなくてはならない。
フィアはあからさまに嫌そうな顔をする。
「……お前が行けよ」
「……悪いが、俺は今から図書館の蔵書整理だ」
お前が行け、と言ってシストはフィアの頭をたたく。
―― きっかけがなきゃ、仲直りなんかしないだろうからな。
シストなりの、思いやりである。
フィアはむっとしつつも、頷いた。
そして、そのまま重い足取りでルカの部屋へ向かう。
ドアをノックした。
「ルカ」
……返事が、ない。
「……ルカ?」
先ほど喧嘩したから返事をしないのだろうか?
フィアは一つ溜息をついた。
「ルカ、あけるぞ」
そして、ドアを開けた。