騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□素直になれないのは、きっと……
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ルカは溜息をついた。

「無茶ばっかりする阿呆に説教してたんだが、こいつは一切聞いてないみたいだからなぁ……」

「わかったって言ってるんだ。しつこい」

「だから……!」

ルカが何か言いかけた時、フィアがキッとルカをにらみつけて、言い放った。

「しつこいと言っている!何で俺にそこまで干渉するんだ?!

 俺だって、もう子供じゃない……守られてばかりの姫君でもない!

 ……もう、放っておいてくれていいと言っているだろう?

 ……義理や、義務だけで傍にいるのなら、もういい。

 俺の両親が死んだのは、お前の所為じゃないと、いつも言っているだろう?

 だから……行けよ」

「…………?」

"行け"

フィアの口から放たれた言葉に、シストを含め周りの騎士たちはきょとんとする。

ルカは苦々しそうな顔をして、フィアを睨み返した。

「……なんの、ことだ?」

「惚けるな。外部から、要請がきていることは、知ってるんだ」

フィアは青色の瞳で従兄を見据えていた。

ルカはくっと息をのんだ。

そして、首をかしげているシストに、フィアは説明した。

「ルカ、外の地方から声をかけられてるんだ。その剣の腕を買われてな。

 広くて割と大きな地域だ……この地域よりも、よほどやりがいがあるだろう。

 もともと、こいつは他人に必要とされるのが好きなタイプだ。向こうが提示した条件だって悪くない。

 それなのに、こいつは返事を先延ばしにしてる。

 理由を聞いたら"お前が心配だから"だぞ?

 ……ふざけるのも大概にしてくれ。俺は、そんな子供じゃない。

 ……義理や義務で傍にいるだけなら、そんなの、余計なお世話だ。

 貴様の世話にならなければならないほどの年じゃない。

 さっさと、何処へでも……」

フィアが言い切るより先に、ルカがフィアを思い切り殴った。

「ルカっ!」

何してるんだよ!?とシストが叫ぶ。

ルカは息を荒くして、床に転んでいるフィアをにらみつけた。

「お前がそこまで馬鹿だとは、思ってなかった」

幻滅だとでも言わんばかりの声色。

「…………」

フィアは顔を上げてルカを見る。

口の端に流れた血を手の甲で拭って、吐き捨てるように言った。

「何をそんなにむきになっている?……俺には、理解できない」

「……もう、いい」

ルカは顔をうつむかせ、フィアの横を通って部屋を出て行った。



―― お前なんか、もう知らない。



すれ違いざまに、そう吐き捨てるルカ。





フィアは従兄が出て行ったドアを見て、一つ溜息をつく。

そして、いまだ困惑している様子のシストを見て、言った。

「……まったく。いったい、なんなんだ…あの阿呆は。

 あぁ、シスト……見苦しいところを、見せたな。任務だろう?行くぞ」

「あ、あぁ……」

シストは小さくうなずく。

フィアは、いつも通りだった。




 
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