騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□Lost… ― 記憶 ―
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Side アル
目が覚めたとき、飛び込んできたのは、青い瞳のヒトだった。
誰?君は誰?どうして、どうして僕の手をつかんでいるの?
怖かった。
誰?誰なの?君は、誰?
怖い。
こわい
コワイ。
そう思った瞬間には、魔力を放っていた。
離せ、やめろ。近づくな。
必死に、必死に抵抗して。
翡翠の髪の男性に手をつかまれて、ようやく止まった。
彼に名を問われて、止まってしまった。
僕は、僕は。
……僕の、名前は?
そして、聞く。
僕の名前はアル。ここはディアロ城というお城で、翡翠の男性は僕の先生に当たるヒトでジェイドという名前らしくて。
僕は、騎士だと言うこと。医療部隊に所属していたこと。
任務で、魔術を食らって……記憶を失ってしまったらしいということ。
聞いた話を整理していたら、最後に問われたこと。
―― 僕に声をかけてきた、青い瞳のヒトの名前を覚えているかと?
覚えているはずがないじゃないか。
自分の名前も、この場所がどこなのかさえも覚えていないのに。
僕がそういうと、ジェイドといったヒトは、明らかに落胆した顔をした。
そして、教えてくれた。彼の名を。
―― フィア。
僕の、親友だという彼の名前。
亜麻色の髪、蒼い瞳。
綺麗なヒトだった。
優しそうな声だった。
彼が、僕の親友?
全く覚えていなかった。
部屋にはいってきた彼の名を呼んだ、そのとたんに、フィアは期待に満ちた目で僕を見る。
ごめんね。僕は、覚えていない。
その事実を伝えれば、落胆した様子の彼。
どうして、どうして。
どうして君は、そんな顔をしているの?
どうして、僕の心配をしてくれるの?
"僕らしい"なんていって笑ってくれるの?
ねぇ、どうして……?
彼が笑うたび、声をかけてくれるたび、ズキズキと、胸が痛くなった。
―― この痛みは、なに?