騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□Lost… ― 記憶 ―
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それから暫くして、ジェイドが部屋に戻ってきた。
「フィア、アル、入りますよ?……おや?」
返事がないことを不安に思って、ドアを開ければ。
「……眠っていましたか」
アルのベッドにつっぷするような形で眠っているフィアを抱き上げ、ジェイドはくすりと笑う。
「アルと一緒にいるときのフィアは、年相応の顔をしていますね……」
普段は、強がってばかりで、つんけんした態度を取る少年。
それは、とても十七歳の少年のそれには見えず、騎士団で一番年上であるジェイドと似たり寄ったりにさえも見える。
しかし、アルと一緒にいるときは、違っていた。
子供っぽく笑っているフィアは、年相応のそれに見えた。
「普段も、そうしていればよいのに」
その亜麻色の髪をそっとすいて微笑む。
「さて……部屋に連れて行きましょうか……その前に、ルカに部屋の鍵を借りなければなりませんかね」
小さく呟き、歩き出そうとしたジェイドの白衣のすそを、誰かが……アルがつかんだ。
子猫のような黄色の瞳が、ジェイドを見つめている。
ジェイドは少し驚いた顔をして、アルを見つめ返した。
―― もしかしたら。
記憶が戻ったのか?そう思って。
震える声を抑えて、ジェイドはアルにたずねた。
「どうかしましたか?アル」
しかし、それは外れで。
アルは小さく首を振り、言う。
「……わからない」
何がしたいのか、わからない。
アルはそういって、ジェイドの服をはなす。
「……フィアと一緒にいたいのですか?」
ジェイドはアルにたずねる。
「……わからない。何も、わからないけれど……僕は、たぶん」
―― 彼のそばに、いたいんだとおもう……
アルの言葉をきいて、驚いた顔をした。
「……そうですか」
ジェイドは微笑むと、フィアをアルの横に下ろした。
「……?」
「簡易ベッドですよ。さすがに、二人で同じベッドで寝るのもなんでしょうから」
手早く簡易ベッドを用意すると、フィアをそこに寝かせる。
「じゃあ、僕は隣の……ドクターステーションにいます。何かあったら、このボタンを押してください」
ジェイドはアルの頭を撫でると、部屋を出て行った。
「……フィア」
泣き疲れて眠ったフィアに、そっと手をのばすアル。
その白い手で、そっとフィアの亜麻色の髪を撫で付ける。
「僕、君のことを……思い出したいよ。君が、どうして泣いてくれるのかを、知りたいよ……」
優しく、優しく、その髪を漉き、呟くようにいう。