騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□Knight ― 純白の堕天使 ― お題小説(お題提供:あにょ様)
2ページ/7ページ
(Knight本編のフィアの初任務の前のお話です)
― 影猫 本部 ―
「御主人(マスター)!お呼びですか?」
ふわふわとした癖っ毛の黒髪の少年が、彼らのトップ……フォルのいる部屋に飛び込んだ。
「あぁ、ロシャ。よく来たね……前に、話したことを覚えているかな?」
「前に……?」
きょとんとするロシャ。
その前に、フォルは一枚の写真を出した。
「あぁ、ご主人にそっくりな天使のこと」
ようやく思い出したらしく、ロシャはこくこくと頷いた。
フォルはその様子を見て、笑う。
「そう。この子のことだ……今度、この子が騎士としてはじめて貴族護衛の任務につくらしい」
「へぇ……それで?」
口角を上げるロシャ。
フォルは、ロシャにいった。
「この子が、護衛を勤める女性を攻撃して欲しい」
「え?」
わけがわからない、という顔をするロシャ。
「せっかくだから、本人を狙えばいいのでは?」
ロシャの申し出に、フォルはゆっくりと首をふった。
楽しそうに笑いながら、いう。
「面白くないだろ?それじゃ。
それに……どうせ彼は、その女性を庇うよ」
―― 偽善者の天使なのだから。
「……御主人?」
フォルの瞳が憎悪に燃える。
写真に写る、同じ色彩の少年……フィアの写真を、いとおしげに撫でてから、握りつぶした。
その様子をみて、ロシャは一瞬怯んだ顔をした。
フォルは美しい笑みを浮かべて、いった。
「僕はね……偽善者が大嫌いだ。天使はもっと嫌い。
だから……苦しませて、苦しませて、苦しませた末に、服従させて見せる」
「……なるほど」
フォルの瞳に宿る憎悪。
それに同調するように、ロシャは楽しそうに笑った。
フォルはその頭をそっと撫でる。
「……いって、くれるね?」
「もちろん。ご主人の命ならば」
くすり、と笑って、小さな少年は、大きな鎌を担いで、走りだす。
「ノアールー!銃かして、銃!!遠距離から攻撃してみたい!」
そういってはしゃいでいるロシャをみて、フォルは笑った。
―― 扱いやすい、駒だ。
自らに忠実に動く、操り人形(マリオネット)。
フォルほどの魔力があれば、それを作りだすくらい、造作ないことだった。
そして、生み出した四つの操り人形。
兄に見捨てられたと思い込み、絶望から生まれたロシャ。
誰にも愛されないという孤独から生まれたブラン。
この世の理不尽に対する憎悪から生まれたシャム。
自分に存在価値を見出せないという、虚無から生まれたペル。
そして、その操り人形を操る人形師、ノアール。
これが、影猫の中心メンバー。
「この駒で、必ず僕は……」
―― 僕を拒んだ世界を、服従させて見せる。
堕天した自分を戒めに、殺そうとした両親を殺し、
妹を孤独の中に置くために、妹の育ての親も竜に殺させた。
その、フォルという名の悪魔はまさしく。
純粋に悪意(許すものか)
一番最初がこのダークさ(汗)
一度ちゃんと書きたかった敵サイド。
四人(ロシャ、ブラン、ペル、シャム)はそれぞれこの文章中に描かれた感情にとらわれていた魂。
彼らの過去も、いつか書いてあげたいかもしれない。