騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□勿忘草 ― この世界で ―
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「んー……!終わった!」

大きく伸びをして、シストは書き終えた書類をまとめた。

眼鏡を外して、ひとつ息をつく。

固まった関節を鳴らしてから立ち上がると、その書類をもってリーダーの元へ、向かう。






「ルカ、はいるぜ」

「おぅ……相変わらず、仕事速いな」

シストから書類を受け取って、ルカは笑う。

「じゃあ、明日は……」

「あぁ、わかってる。……気をつけて、いってこいよ?」

ルカはシストから休暇届を受け取っていた。

騎士として、休みは早々取れない。

騎士が休む間も、魔獣は休んでくれない。

しかし、シストはどうしても休みを取りたかった。

行きたい場所があるから。

ルカも、それは知っている。

「……あぁ」

しみじみ、といった様子でルカが言う。

「しかし……時間たつのも、早いな。俺たちが入隊してから、どれくらい立つ?」

「えっと……十年以上、だな」

「すごい話だよなぁ」

クックッと笑うルカ。シストもつられたように笑った。

「色々あったよな。入隊初日に、剣忘れたの、お前だったろ?」

ルカがからかい口調で言うと、シストは顔を赤くした。

どうやら、事実らしい。

「!む、蒸し返すなよ!!」

「あはは!だって、おかしかったんだもん。いまだにわすれらんねぇよ」

「さっさと忘れろよ!」

まったく……といって溜息をついているシストの方を叩いて、ルカは笑った。

「そういう顔してるほうが、お前らしいよ」

「え」

「……フィアが心配してたぜ。"元気ないみたいだ"って」

ルカの言葉に、シストは何度か瞬きをした

無愛想で有名な自らのパートナーがそういうとは。

「俺もよっぽど沈んだ顔してたんだな」

「あぁ。だろうな」

「……フィアに"サンキュー"って伝えといて」

「了解」

シストは嬉しそうに笑うと、ルカの部屋を後にした。






 
 
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