騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□勿忘草 ― この世界で ―
6ページ/10ページ




騎士になり、ヴァーチェになって。

エルドという、パートナーを見つけた。

ちょっとお人よしで、明るい性格のエルドは、一緒にいて楽しいと思える相手だった。







そして、親しくなるうちに知った事実。

「俺さー、親いないんだ」

「え?」

明るい調子で言ってのけたエルドに、シストは驚いた。

エルドはにかっと笑って、頷く。

「俺、孤児だよ!ずっと孤児院でいきてきた。

 ちょっとでもそこに恩返ししたくてさ、騎士になったんだ!」

そういうエルドに、シストも自分の境遇を告げた。

「俺も、本当の両親を知らない……養父母と、姉が俺の家族だ」

「へぇ……何か、俺たち」

"似ているな"

エルドの言葉が、嬉しかった。

同情するんじゃない。

さげすむのでもない。

純粋な、"にている"ということに対する、親近感のようなもの。

そのころから、彼らは一緒に仕事をするようになった。








「シスト!任務いくぜー!」

「おう!」

二人でやれば、どんな魔獣でも倒せると思っていた。



―― あの事故が起きるまでは。









エルドの葬儀のとき、シストは泣いた。

泣くなんて、情けないと思ったが、泣くことしかできなかった。

「エルド……っ!」

ごめん。

夢を、壊してしまってごめん。

未来を、奪ってしまって、ごめん。

シストは、何度そのことをわびただろうか。

彼自身も、それを覚えていない。

償いのすべなど、存在しない。

だから、せめて。



―― 彼の分も、俺が働くんだ。立派な騎士となって。



心に刻み込む、親友の名。

消えない傷は、シストを強くする。




 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ