騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□桜ノ宴 ― 宵桜ニ酔ヒテ ―(由月さんのお子様とコラボ)
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「あ、やっぱりもうきてた」
彼らがいた部屋のドアが開いて紫色の髪の少年がひょこりとかおを出した。
以前エルノたちが彼を見たときは姉にリボンを結ばれていたのだが、今日はひとつに束ねた髪を、普通の髪紐で縛っている。
シストに続いて、フィアも姿を現した。
それをみて、アルがぱっと顔を輝かせる。
「お帰り、フィア!」
「ただいま。エルノたちも、久しぶりだな。元気だったか?」
飛びついてきたアルを受け止め、フィアはふっと笑った。
その様子を見て、ロディスがにかっと笑みを向けて、答える。
「元気元気!!」
「ロディは元気だけがとりえみたいなものですからね。この馬鹿でかい声がその証拠です」
エルノの言葉に、ロディスは"ひどい”といって、頬を膨らませた。
その様子を見て、ウィロウがおかしそうに笑う。
「遅くなってすまなかったな。……シストの寄り道に付き合っていたものだから」
ちらり、とパートナーに目をやれば、シストは"悪い悪い”といって、頭を下げた。
「寄り道?」
「ちょっと、見てきたいものがあってさ……」
シストが説明をしようとしたとき、ちょうどもう一度ドアが開いた。
「エルノ君、ロディス君、シャープ君、ウィロウ様ようこそ!!きてくれてありがとう!!」
テンションの高い彼を見て、エルノは思わず苦笑した。
「アンバーさん、こんにちは」
「へへっ!今日は楽しんでいってね!
とはいえ、立食形式の気軽なパーティだから。会場は中庭だよ。もう準備はできたから!
あ、ジェイドは僕と一緒に来て!!」
にっこりと笑顔で言うと、ジェイドの腕をつかむ。
ジェイドは予想外の行動に目を丸くした。
「え?!あ、はい!では、また後ほど!」
挨拶もそこそこに姿を消すアンバー。
「……あの人は相変わらずだな」
にぎやかというか、騒がしいというか。と、シャープがぼそりとつぶやく。
シストは同意するように頷いた。そして、にかっと笑う。
「さて、じゃあ俺たちも行こうか。会場に」
そして、彼らは中庭に向かった。
「うわぁ!!」
「すげぇ!」
エルノとロディスが感嘆の声を上げた。
ウィロウはきらきらと目を輝かせ、シャープは仲間がはしゃいでいる様子をじっと見つめている。
咲き誇る、巨大な桜の木。
淡い紅色の花びらがひらひらと妖精のように舞っている。
その空間中の空気が香っているのではないかと思えるほどに、優しい光と香りに満ち溢れていた。
「なかなかのもんだろ?外にこんな大人数でわらわらいくわけにはいかないから、城の中での花見なんだけどさ」
やっぱり外のほうがよかった?とシストが問えば、首を振るエルノたち。
ここでも十分だと、思っていた。
わいわいとにぎやかな雰囲気。暖かい空間。そして、隣にはいつもの仲間と、異世界の友人と。
一時の再会とわかっているが、それだからこそ、楽しく、愛おしく、かけがえのない時間だと思えるのだ。