騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□桜ノ宴 ― 宵桜ニ酔ヒテ ―(由月さんのお子様とコラボ)
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そして、当日になった。

約束どおり、ジェイドがエルノたちの前に現れる。

「ふぅ。遅くなってしまって申し訳ありません。ご都合はよろしかったですか?」

にこりと微笑むジェイドに、四人は頷いた。

そうですか、というとジェイドも嬉しそうな笑みを浮かべて、足元に魔法陣を描いた。

「そういえば、今日はアンバーさんはいないんですか?」

きょろきょろとあたりを見渡して、エルノがたずねると、ジェイドは苦笑して、言った。

「今日は僕一人できましたよ。彼は、"条件"をクリアために昨日は徹夜だったようですから」

「条件?」

シャープが怪訝そうな顔をした。

ジェイドは"こちらの話です"と笑みを浮かべると、四人の手を引いて、魔法陣の中心に立った。

「あ、いつものことですが、着地に関しては僕の力だけでは、どうにもならないので、気をつけてくださいね」

ジェイドのその言葉と同時に、魔術が発動する。

四人は、だいぶ慣れてきた世界をわたる浮遊感に包まれた。














魔術の効果が切れて、エルノたちは地上に落ちる。

「わぁぁ?!」

どさっと音を立てて落ちるエルノたち。

ウィロウはシャープに抱えられるような体制で、顔を赤くしている。

"ありがとう”と目で言うウィロウを見て、シャープは気にするなというように軽く頷いた。

そんな友人たちを見て、ジェイドは申し訳なさそうな顔をした。

「大丈夫ですか……おや」

「うぅ……重たい、です」

四人の下敷きになって小さくもがいているのは……

「あ、アル!ごめんなさい!」

「大丈夫か?!」

「……すまない」

「……(ごめんなさい)」

白髪の少年の上に落ちてしまったらしい。

あわてて四人がどくと、アルはへにゃりとわらって、"大丈夫ですー”といった。

「本当にきてくれたんですね!

アンバー様の提案も突然だったので、こられなかったらどうしようって、ちょっぴり心配だったんです」

無邪気にそういって笑うアル。

その笑みにつられたように、微笑んでエルノが言った。

「せっかくのお誘いですから。断る理由もありませんし、僕たちもそろそろアルたちにあえたらなぁって思っていたので。
 
 ……そういえば、フィアは?」

エルノははたときづいて、たずねた。

アルの隣にいることが多かった、亜麻色の髪の少年の姿がない。

その指摘に、アルは"あぁ”といって、答えた。

「任務なんです。シストさんと一緒に」

「え?任務って普通に仕事あったのか?」

ロディスが驚いた顔をする。

自分たちを呼んでいるということは、仕事もないのだろうと推測していたため、アルの返答が意外だったらしい。

アルはこくりと頷くと、いった。

「僕……というか、フィアやシストさんたちが相手にしているのは、魔獣や貴族ですからね。

 僕たちの都合のいいようには、いきませんよ」

「とはいえ、そろそろ帰ってくる頃だと思いますけどね」

ジェイドが時計をちらりと見て、つぶやくように言った。と、そのとき。




 
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