騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□Partner
1ページ/7ページ



―― ようやくお前は、笑うようになったな。

   願わくば、もう二度と……

   お前の、あの顔を見たくはないよ……



― Partner ―





「ルカ、少しいいですか?」

ある日、ルカの部屋のドアを誰かがノックした。

聞きなれたその声に、ルカは書類から顔を挙げる。

「ジェイドか。どうした?」

部屋に入ってきたのは、翡翠の髪の男性……ジェイド。

”貴方に用事というわけではないのですが”と前おいて、ジェイドは言った。

「いえ……シストが来ていませんか?」

「シスト?」

怪訝そうに、ルカは顔を顰める。

紫の彼の姿は、見ていない。

「任務は終わったって、報告はあったけど」

ルカがそう答えると、ジェイドは一つ溜息をついた。

「どうかしたのか?」

「いえ……フィアが少々傷を負ってきましてね……」

ジェイドの返答に、ルカはさらに不思議そうな顔をした。

「あぁ、さっきフィアが報告に来たから知ってる。それがどうかしたか?」

ルカが質問を重ねれば、ジェイドは苦笑する。

「シストの悪い癖ですよ」

「……あぁ、なるほど。それで……」



“シストの悪い癖”。



それは、相棒(パートナー)に傷を負わせたとき、人並み以上に凹んでしまうこと。

「気にしていない、とフィア本人も言っていたのですけどねぇ……」

「……まぁ、そうもいかないんだろ。あいつの場合は……」

ルカは遠い目をした。

ジェイドも、小さくうなずく。

「最近、ようやくフィアと任務に行くときに笑うようになりましたものね。あれで、ずいぶんな進歩です」

「本当だよ……エルドが死んだときは、もうシストは騎士を続けられないんじゃないか、って心配したんだぜ」

ルカの声は、重く沈んでいる。

ルカは、思い出していた。“あの日”のことを……






 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ