騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□Partner
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―― ようやくお前は、笑うようになったな。
願わくば、もう二度と……
お前の、あの顔を見たくはないよ……
― Partner ―
「ルカ、少しいいですか?」
ある日、ルカの部屋のドアを誰かがノックした。
聞きなれたその声に、ルカは書類から顔を挙げる。
「ジェイドか。どうした?」
部屋に入ってきたのは、翡翠の髪の男性……ジェイド。
”貴方に用事というわけではないのですが”と前おいて、ジェイドは言った。
「いえ……シストが来ていませんか?」
「シスト?」
怪訝そうに、ルカは顔を顰める。
紫の彼の姿は、見ていない。
「任務は終わったって、報告はあったけど」
ルカがそう答えると、ジェイドは一つ溜息をついた。
「どうかしたのか?」
「いえ……フィアが少々傷を負ってきましてね……」
ジェイドの返答に、ルカはさらに不思議そうな顔をした。
「あぁ、さっきフィアが報告に来たから知ってる。それがどうかしたか?」
ルカが質問を重ねれば、ジェイドは苦笑する。
「シストの悪い癖ですよ」
「……あぁ、なるほど。それで……」
“シストの悪い癖”。
それは、相棒(パートナー)に傷を負わせたとき、人並み以上に凹んでしまうこと。
「気にしていない、とフィア本人も言っていたのですけどねぇ……」
「……まぁ、そうもいかないんだろ。あいつの場合は……」
ルカは遠い目をした。
ジェイドも、小さくうなずく。
「最近、ようやくフィアと任務に行くときに笑うようになりましたものね。あれで、ずいぶんな進歩です」
「本当だよ……エルドが死んだときは、もうシストは騎士を続けられないんじゃないか、って心配したんだぜ」
ルカの声は、重く沈んでいる。
ルカは、思い出していた。“あの日”のことを……