騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□Orange Rose
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あの日、あの時……

私たちの運命は、決まった。

あの悲しい日を、貴方には知らせずに。

私は生きていく。

それでいいの。

それが、幸せなのよ。

貴方が笑ってくれるなら、私はどんな荷物だって背負っていけるから……












「…………っ!」

まだ外が薄暗い明け方に、少女は目を覚ました。

桃色の長い髪が枕の上に広がっている。

「……夢、かぁ……なんだぁ」

あはは、と声に出して笑う。

その桃色の瞳から、零れ落ちる雫。

「……嫌ーな夢」

少女は、小さく呟いた。


今見ていた夢は、妙に現実的(リアル)で。



―― パパ、ママ……


泣きながら、小さな手を握る自分。

隣にある、小さなぬくもり。

遠ざかる、父と母の背中。










そんな夢を反芻していた時。

「何の夢だ?」

「?!」

不意に上から降ってきた声に、少女……ロゼは、驚く。

続けて聞こえる、クックッと笑う声。

それを聞いて、ようやく彼女は思い出した。

「シスちゃん……そういえば、帰ってきてたんだっけ」

シストは、どういうわけか休みをもらって帰ってきた。

そして、今日はロゼが引き止めずとも、家に泊まっていくといったのである。

普段なら、ロゼにからかわれる前に親に顔を見せてから、さっさと帰ってしまう。

シストにしては珍しい行動だな、と思いつつ、ロゼはうれしく思っていた。








「忘れてたかよ」

二段ベッドの上段からひょこりと顔を出す紫の髪の弟……シスト。

シストは幼い頃に騎士になって家を出て行ったため、いまだに二人の部屋は同じ部屋。

そして、そのまま二人で眠る形になってしまったのである。

ベッドから顔を見せる弟の姿を見て、ロゼはほっとしたように笑った。

「……で?怖い夢見たわけ?」

真剣な顔をして、シストが問うと、ロゼは微かに笑って、頷いた。

「怖いというか……嫌な夢、かな」

「嫌な?」

「うーん……何でもないよ。大丈夫。ごめんね、起しちゃった?」

自分がうなされていたためにシストが目を覚ましたらしいということに気付いて、ロゼは申し訳なさそうな顔をした。

シストはゆっくり首を振った。

「いや。俺、いつもはこんなにゆっくり寝ないから、平気だよ。

 姉貴、寝なおせる?」

「うーん……」

微妙な返事を返す、ロゼ。

正直、自信はなかった。

だけど、久しぶりに家に帰ってきたシストは、疲れているだろう。

それを考えると……

ロゼは悩み続けていた。と、その時。




 
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