騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□素直になれないのは、きっと……
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嫌いだと、何度も言った。

大嫌いだと、何度も言った。

でも、本当は……

その言葉を吐く理由は……ただ……――





Love or hate




ある薄曇りの日のこと。



「いい加減にしろっ!!」



ディアロ城、騎士の棟に響き渡った怒声。

驚いた騎士たちは、その声が響いた部屋をこっそりと覗き込む。

その室内には、二人の人間の姿。

向かい合って、睨み合っているのは……

「……貴様に、そんなことを言われる筋合いはない」

そうつぶやくように反論するのは、亜麻色の髪に蒼い瞳の少年……フィア。

それを見て険しい顔をしているのは、黒髪に紅色の瞳の青年、ルカ。

「……俺は、心配して言っているんだぞ」

「わかってる。わかってるって言って……」

「わかってねぇから言ってんだろ?!」

普段にない大声で怒鳴るルカ。

それに、周りにいた騎士たちはざわつく。

普段、こんな怒鳴り方をすることはないのだ。

フィアと喧嘩になっても、結局はルカが折れて、なんだかんだで丸く収まるのに……




「おい、フィア、ルカ、どうしたんだよ……?」

任務のためにフィアを呼びに来たシストが驚いた顔をして二人に声をかける。

ルカは溜息をついて、フィアを指差した。

「この馬鹿がいつまでたっても無茶ばっかりするからだよ」

「馬鹿っていうな。いつも平気だって言ってるのに、しつこいお前が悪い」

プイ、とそっぽを向くフィア。

その頬に貼られた湿布を見て、シストは目を丸くする。

「どうしたんだよ、それ」

「…………」

答えようとしないフィアの代わりにルカが答える。

「街中の巡回に行って、ガラの悪い奴に絡まれてた子供助けて殴られたんだと。

 ……一人で行く阿呆がどこにいる?」

「フィアらしいっちゃフィアらしいけど……相手は?何人だよ?」

「七人」

「は?!」

フィアの返答にシストは目を見開いた。

さすがにその人数を一度に相手しようとは思わないだろう。

一般の人間相手に剣を抜いたり魔術を使うなんて以ての外。

「一人でその人数相手したわけ?!」

「あぁ、全員体術でたたき伏せた」

「……傷はそこ一か所?」

「…………」

再び黙り込むフィア。この様子では、おそらくほかにも傷を負っているんだろう。

「……無茶をしやがる」

ルカが怒るのも無理はないな、とシストは苦笑した。




 
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