鏈の愛音

□bygone days
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こてん



と,左肩に小さな重み。


「…え、」


首に感じた少しの違和感。

左側を振り向けば,私の肩に頭を預けている金髪が目に入ったんだ。


「ちょ,きんぱ、つ…?」


彼のアンテナ…もといアホ毛が動く度に首に触れるか触れないかのもどかしいような,こそばゆいような感覚が訪れる。
慣れない事態にどうしていいかよく分からず,イラっとしたことを理由に思いっきり彼を引き剥がそうとしたのだが…その瞬間に気が付いてしまった。

肩に圧し掛かった重みがゆらゆらと揺れ,規則正しい呼吸と大きく上下する肩。
…ああ,コイツは寝ているのか。
最所は私をからかってるのかと思ったんだけどな。
どうやら唯単に爆睡していただけらしい。
ああ,爆睡していただけなら無理にでも叩き起こしてやったのに。


私がそうしなかったのは。


「アル…,かあ、さん…。」


掠れた声で,切なそうに,寂しそうに紡がれた金髪の言葉に気が付いてしまったから。

酷く,辛そうな表情を浮かべて眠る金髪。
まるで人の温もりに頼るように私の肩に頭を預ける彼を,どうしても引き剥がす気になれなくて。
こんな間抜け面で寝てる奴を怒る気にもなれなくて,仕方なしに右側の窓へと体重を預けた。
無機質で冷たいガラスが肌に触れ,何となく心地よい。


「ごめんねレナ,…兄さんが。」


ふと,優しい声色をした鎧君が言葉を零す。
鈍色に包まれた鎧姿とその声色は,やはり先程も考えた通り似合わない。
あまりに見つめる私の視線が気になったのか,カシャリと鎧の動く音が響き,彼は腕を組んで此方と目線を交える。

金髪に鎧君。
二人に何が合ったのかは知らないけれど。


なんとなく。


なんとなく,今は…。


「何が?別に,謝ってもらわなきゃいけないようなことなんてされてないし。」


君達の痛みに気が付かないフリをしていようと思ったんだ。


「レナ…、」


だって


「気に,しないの。それより鎧君は寝ないの?」


痛みに気が付いてしまえばきっと。


「あー…,うん。僕はいいんだ。寝られないし。」
「そっか。」


きっと



私の痛みにも,気が付かれてしまうから。




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