鏈の愛音
□bygone days
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「…え、何が?」
硬直し,此方を凝視ししながら問いかけてきた金髪。
…何?私,何か変なことでも言った?
と顔を顰めながらも思い当たる節が全くと言っていいほど無いので思った事をそのまま口することにしよう。
「何がって,何が?」
質問を質問で返したわりに,その答えにあまり興味の無い私は言うなり視線を外へ投げた。
何一つ無い,殺風景な場所。
窓越しに映った景色は本当に何も無い所為で一向に変わらない。
ある程度速度のある乗り物から見る景色なんてコロコロ変わって眺めるのが疲れるというのが普通ではないのだろうか。
まあ,とにかく。
そういったことを思わされる程に辺りは何も無い。
本当に殺風景,というかなんというか。
建物もなければ木や草と言う植物も動物も見当たらない景色。
乾いてひび割れた黄土色の土地が一面に広がっているだけの,そんな景色である。
「お世辞にも綺麗とは言えない景色だ。」とでも表現すればイメージし易いだろうか?
この国内にこんな所があるなんて,ある程度豊かな国だと認識している所為か何となく意外…かな。
「いや,やっぱなんでもねぇや。」
突然,金髪の声が耳に入ってきた。
景色を見ていた所為か,あまりに突然だった声に驚き,少し肩を揺らしてしまった私。
振り向けば隣に座った金髪が面白そうに私を見ている。
…そんなに変なのか。
確かに肩を揺らすなんて,私には似合わない動作かもしれないが。
それを肯定するように面白がられてはなんとなく,此方としては面白くないものがある。
「そ。」
素っ気無い返事。
勿論,わざと。
「ああ。」
結局なんだったのだろう?
と少しばかり引っ掛かったが,さほど興味があるという訳でもないし,私はそれについて特に返事を返すわけでもなく,ただただ沈黙だけが時間を急かして行った。
あー…,眠い。
* * *
静か,だな。
あれからかなりの時間が経った。
鎧君も何も喋らなくなっちゃったし。
金髪もさっきから黙りこくったままだし。
何より客が居ない。客が。
結構ラッシュな時間帯に列車に乗り込んだはずなのに,私達以外に人はほんの少ししか見受けられない。
あまりに静か過ぎる車内は,些か不気味な気もする。
このまま目的地まで着くのを待つのかと思うと,あまりに暇すぎて憂鬱になって来る。
普段は列車で遠出なんてなかなかしないもんだから,待ち時間の潰しなんてしない。し,する必要がなかった。
それなのにどういう訳か,今回この列車で目的とするのは出発地点から何十キロと離れた地区である。
そりゃ時間もかかる訳で,その時間つぶしの術を持たない私はこれからどうしようか奮闘していた。
大佐が押し付けられた上からの視察命令を更に私達に押し付けてきたことがそれら全ての原因だ。
…全く,大佐には毎回いい迷惑かけられてるよ。
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