鏈の愛音

□騒動
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「あの,すみません。何が起こっているのか教えてくれませんか?」



カシャリと音を立てながら一人の男に近付いた鎧君。
…先にここで見ていたその人にこの状況の説明を求めているらしい。
男は少し驚いたような顔をして,それから口を開く。
その後の言葉は聞き取れなかったから,まぁ話が終わったら鎧君に聞くとしよう。

ふと建物の方に目線を戻す私。
その中には人が居ないんじゃないかというほどに静けさを保ち,未だ緊迫した空気は解かれぬままである。

暫くすれば鎧君の話は終わったようで,私と金髪のすぐ横まで戻って来た。
そんな鎧君の腕をツンツンと小突いて意識を此方に向けさせる。



「ねぇ,何て言ってた?」

「強盗が入ったんだって。ここに。」

「…は。」



あー…,人生で始めて、だよ。
目の前の人から「強盗」なんて言葉が出てきたのは。
…本当にそんなことをするバカもいるんだね。



「馬路かよ。ったく,憲兵の奴等ももたもたせずにさっさと捕らえりゃいいだろ。」

「…人質とか取られてたら動きようがないんじゃないの?」

「あー…それもそうか。」



なんだか騒ぎ始めた周辺。
建物の中でも物音がガサゴソと聞こえ来た。



「…出てくるつもりらしい、ね。」

「ああ。」



ピリピリとした空気。
誰もが目の前の扉がいつ開くのかと息を呑む。



「み…みなさん!!危険ですので下がってください!!!」



憲兵が必死になって野次馬達を抑え込もうとする。
引き下がるものと更に見ようとするバカども。
その場の混乱が大きくなって行く─…



「ね、金髪。」

「あ?」

「私達も下がった方が良くない?ただの強盗なら錬金術師が出ることじゃないでしょ。」



そう言って下がろうとした私の肩を掴んで来た金髪。
どうやら「待て。」ということらしい。

仕方が無く金髪の方を振り向けば,なんだか眉間にしわを寄せた表情が飛び込んできた。



「…そうでもないらしいぜ。」



顎で示された建物の前に視線移す…。



「お…おい!!!コイツの命がどうなってもいいのかァ!!!」



そう叫んぶ深いフードを被ったおじさん。
複数で羽交い絞めにした幼い女の子の頭に銃口を突き付け憲兵に引くよう脅すそいつ等。
怯えた女の子の瞳には薄っすらと涙が現れる。

…─人質。
まさにそれは,この状況を表すに相応しい言葉であった。

下手に手を出すことが出来ない憲兵はへっぴり腰。
こういった現場に慣れていないんだろうな…なんて思う自分も実際こんなのに出くわした覚えはない。



「…。」



ただ,1つだけ言えるのは─…



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