鏈の愛音

□騒動
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静かなる日差しとは対照的な街。
まだ朝だと言うのに人の賑わいは昼と変わりが無い気がするくらいに活気に溢れている。

その中でもやけに目立つ鎧姿と赤いコート。
そしてその隣を歩いていれば,嫌でも目立ってしまう訳で。
黒い髪を靡かせてあるく少女…レナのこともすれ違い際に振り向く人が多々居る訳で。



「…人が多すぎて嫌です。」



賑わう街を歩く私はその人の多さにうんざりしていた。
それは,旅の移動手段である列車の駅へ行く為で…。
昨日の夜,結局行き先は決まったんだけど,まさかこんなに早く出発するなんて思ってなかった。

しかし,なんなんだろうこの人の多さは…。
流石にこれだけ居ると尋常じゃないと言うか、、、正直鬱陶しい。



「それは仕方ないだろ。というか敬語!!」



苦笑いしながら敬語のことを注意する金髪。

あ,名前を覚えてないからエドって言わないんじゃないから。
昨日名前で呼べって言われてヤダって言ったでしょ?
だから名前じゃなくて金髪。ね。



「でも,この人の多さは尋常じゃないと思う。」

「何かあったのかな?」



わりと小さく呟いたはずの言葉に反応した鎧君。
その視線の先には通り道を塞ぐほどの人だかり。

…どうやら彼も私の考えと同じなようだ。



「…見に,行ってみる?」

「うーん…どうする?兄さん。」

「まぁ…まだ列車の発車時刻まで余裕あるしな…。見に行ってみっか。」



それだけ言うと三つ編みに結んだ髪を揺らして人だかりの方へと走る金髪。
集まる人を押しのけて事が起こっているはずの人だかりの中心へと進む…。



「ちょっと通してもらうぜ!!」

「すみませんっ。あ、待ってよ兄さん!!」

「失礼します…少し道を開けて頂けませんか?」



静まり返る周辺の者。
人を退けながら進んだその先には…黒い軍服を纏った憲兵。

─凍るような冷たい空気がその場を覆う。



「なんだ?よく分かんねぇけど緊迫してんな…。」



妙な空気の中,緊張感の欠片も無い声を出す金髪。
…少しは空気を読んだ方がいいと思うのは私だけだろうか?

憲兵達の視線の先には1つの建物。
看板からしてどうやら銀行のようだ。

これはもしや…。




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