鏈の愛音

□敬語と身長
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「えーっと302…302…あ、此処ですね。」



─軍の宿泊施設3階。

部屋の番号が書かれた鍵を持ってその番号と一致する部屋を見つけたレナは,眠さのあまりエド達の存在をすっかり忘れ部屋へ入る。

数m.手前に居た当の本人達はそんなレナの姿を見て「はぁ」っと深い溜息を吐き出した。



「ったく,アイツ。先に部屋に入りやがって…。人のこと豆っつたり何たり,失礼な奴だよな。」

「まぁまぁ兄さん。きっとレナ,凄く眠かったんだよ。仕方ないって。」

「ケッ。俺達も部屋入ろうぜアル。」

「え、あ…うん…。」



不機嫌にツカツカと歩いていって303と書かれた部屋の扉を乱暴に開きそのまま奥へと入っていくエド。

そんな兄の姿を見て,弟は更に溜息を零した─…。

* * *

バサリ

黒コートがベッドの上に投げられ,その上に手帳と銀時計,それから部屋の鍵が落とされた。



「眠…。」



ソファに落とした腰はズルリと滑り背もたれに頭が掛かる。
スラリと長く伸びた白い脚は投げ出され,美しい金銀妖瞳を隠すかのように彼女は右手で顔を覆う。



「大佐も何考えてんだか…。」



私が人と一緒に行動することを嫌うの,知っている癖に。
命令じゃなきゃ断るどころか逃げていたところです。


─…あんまり,人と関わりたく無いのに。
だけど,大佐はそうさせてくれない。

人と関わらないようにする為に,今まで旅をして来て根無し草だったというのに。



「これじゃあ意味が無いじゃない…ですか。」



電気も付けずに入った部屋は薄暗く,微睡むには心地よい暗さ。
私の呟いたその言葉は,誰に聞かれること無く虚無に消える。



「大体,なんであんな豆と一緒に…─」

「誰が豆粒みたいで見えないほどのチビだあああああああッ」

「…。」



耳を劈くような怒涛が響く。
…正直,頭痛がするほど響くので止めていただきたいです。



「あわわわ…ちょっと兄さん!!女の子の部屋に勝手に入っちゃ…」

「いいんだよ。コイツなんかに構うなって。だいたい今…お前豆つったr…いででででででっ」



何の前触れも無く急に入ってきたエドはレナにアンテナを引っ張られ涙目になる。
アルは「だから止めたのに…」なんてまたも溜息。


レナの視線が痛いほど突き刺さった。
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