鏈の愛音
□敬語と身長
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茜色に染まり始めた空。
レンガを積んだ家々の窓に赤が反射して,全てが赤に見えるその景色。
鈍色の道までもがほんのりと赤く見えて…─
全てが赤いその街は,まるで燃え上がる炎のよう。
そんな茜色に堕ち逝く空の下で,
黒い影が3つゆらりふらりと動いていた─…
「で,結局どうするんですか?これから。」
その影のうちの1人─レナは一緒に歩いていたエドとアルに言葉を傾ける。
あの後─…
ロイからエド達とレナは一緒に行動するように言い渡された後,
結局どうしようもなくなった3人は…取りあえず街に出てみたのだった。
「どうするもこうするもなぁ…。あ、お前はどうしたい?」
風に靡く金髪を輝かせ,レナの少し先を行くエドは振り返り,
レナの隣を歩くアルは鎧の軋む音を響かせながら返事を待つ─。
少しだけ,ほんの少しだけ空白の時間が流れて…
2人が瞬きをした次の瞬間にはレナの言葉が発せられていた。
「特に希望はありませんので,お2人で決めてください。」
興味無さそ気に零されたレナの言葉に,2人は目を丸くする。
「はぁ?だってお前、、、今まで旅してしてたんだったら目的くらいあんだろ?いいのかよ。オレ等が決めちまっても…」
「別に構いませんよ。」
即答。
何食わぬ顔で手帳を開き始めるエドは少し首を傾げる。
…─本当にいいのかよ。
っつかコイツやっぱ読めねぇつか分かんねぇ奴だな…。
眉間にしわを寄せて考え込むとレナに「変な顔。」と横目で冷たく言われたのでむしゃくしゃして強めの口調になる。
「じゃあ本当にオレ達で決めるぞ。いいんだな。」
「女に二言はありませんよ。」
「「それを言うなら男でしょ(だろ)」」
2人に突っ込まれたレナは少し不機嫌そうに顔を歪めて「どちらだっていいじゃないですか。」なんて無茶苦茶言い始めた。
「兄さん。取りあえず今日は宿に行こうよ。もう日が落ちる─…」
そんなアルの言葉に2人は空を見上げる。
─…茜色の空は闇色に堕ちかけていた。
「ここからだと軍の宿泊施設が近いですね。軍属ですから多少安くなりますし。」
「ふあああ」なんて欠伸を零して目を擦るレナ。
灰と黒の瞳がそれによりほんのりと潤んだ。
その眠そうな仕草に,此方まで眠気が誘われる─…。
「じゃあそうすっか。」
上にやった視線を街に戻し,道端に置いたトランクを持ち上げるエド。
「うん。」
それに続いてアルが返事をし,レナが更に眠そうに欠伸を再び。
「何でもいいですけど,早く行きましょうよ。…眠いです。」
「わーってるよ。」
赤いコートを翻し前を進む。
金髪を照らしていた茜色は,やがて闇に堕ちた─…