鏈の愛音
□幕開け
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カチ─…
カチ─…
カチ─…
カチ─…
静寂に包まれた部屋の中で,時計の針が進む音だけが妙に響く。響く。
「…。…っつーかお前,誰?」
「…は?」
静寂を破るかのように不意に零されたエドの言葉に,そんなことも知らず目の前の人物と口喧嘩をしていたのか。
…とその場の者は溜息を付き頭を抱える。
周りの者の様子にエドはキョトンとした顔で目の前の少女に目線を変え,
アルも同じように不思議そうに彼女を見つめる…。
「っと,そういえば君はレナと会うのが初めてだったな。」
そんな2人の様子に気が付いたロイは苦笑しながらレナの肩に手を置き,自己紹介するよう促す。
薄い桜色の唇が…僅かに動いた。
「レナ・プラチド…。一応鏈の錬金術師です。…宜しく。」
「「…。」」
暫くの沈が続き…次に出てきたのは,
「「え…ええええええええええええええええええ!?」」
驚きの声だった。
「え…あの…鏈の錬金術師って…兄さんと同じ歳で国家錬金術師の資格を取ったって言う…?…僕達と同じようにあちこち旅して回ってるていうあのレナ?」
アルは驚きを隠せずに身振り手振りでレナに聞いて...その後ろでエドもポカンと口を開けていた。
「正確には半年ほど後に,ですがね。」
「馬路でコイツがその鏈の錬金術師かよ…。」
「信じられねぇ。」とでも言うような顔をするエドに,レナは…
「何ならお見せしましょうか?練成する姿。」
なんて挑戦的にクスリと口角を吊り上げ,妖しく微笑んだ。
レナの黒く光るその髪が
窓から入り込んだ悪戯な風に靡いて
その笑みを一層美しく魅せていて─…
「…。」
妖艶な笑みに,
何故だろう?
魅入ってしまっているオレが居た─…