鏈の愛音
□幕開け
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それは私達の始りの日─…出逢えた奇跡にいつか感謝するかもね。
「まったく…だから戦うのは嫌だったんだ。」
広い空間に疲れの色が滲み出ている声が響く。
イスに座ったその声の主はゆったりと足を組み,自我の疲れを癒すように背を預けた。
「それさっきも聞いたぜ大佐。」
呆れながらその言葉に反応した黄金色の髪の少年。
ドカッとソファに腰を落とすと同じように後ろへ背を預ける。
彼の名はエドワード・エルリック。
その目の前に居るのがロイ・マスタング。
ロイの部下達と会話を交わしているのはエドの弟のアルフォンス。
彼等は先程までエドとロイのどちらが強いかと言う噂が始りで
面白半分に開催された(?)「焔VS鋼」という一戦を交え…たその後片付けを行っていた。
「というか…なんで俺達まで片付けやらされたんですかー。完全なトバッチリじゃないッスか。」
「そうですよー。大佐ぁ。」
「私の所為にするくらいならば大総統閣下にでも文句を言ってはどうだ?」
なんて色々な声が飛び交う中
コンコンコン─…
と不意に扉を叩いた音が会話を割ったんだ。
「失礼します大佐。査定ついでに顔を見せろとのことでしたので取りあえず来ましたが…取り込み中でしたか?」
ふわりと流れる漆黒の髪がエドの金目に映る…
「…?(誰だコイツ。)」
扉を開けて入ってきたのは軍服じゃない女。
…─凛として透き通った声がその場のオレの耳に響いた。
「いや,問題ない。入りたまえレナ。」
大佐の言葉に軽く頷くレナと呼ばれたその女は扉を締めてそっと歩いて来て,なにやら面倒くさそうな書類の束を大佐に渡す。
「これは?」
「東部のいくつかの町を回った報告書です。軽く目を通すくらいで結構ですから。…ん?」
報告書を渡し終わるとオレの視線に気が付いたのか此方を覗き込んできた女。
黒と灰の金銀妖瞳がオレを見据える─…
「なっ…なんだよ?」
あまりにじっと見てくるもんだからなんだか耐えられなくなって少し離れるオレ。
…でもこの女,どこかで見た事あるような気が…?
「…黄目金髪のチビ…鋼の錬金術師ですか?」
ブチッ
「誰が豆粒どチビだぁああああッ!!!」
「いえ,そこまで言ってませんから。」
「煩せええええっ」
「兄さん,お願いだから落ち着いて…」
波乱の出逢いの始りだった─…