鏈の愛音
□bygone days
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人と関わりたくない。
それは,昔から私が抱えてきた大きな壁。
否,抱えたのではない。正確には…“作った”である。
関わりたく無いが故に他人と自分との間に高い壁を作った。
誰も入って来れないように,誰も壊せない壁を作った。
誰も,誰も…私に触れないで。
いつも冷たく突き離した。
関わろうとして私に近付く奴は,誰だって。
誰も,私になんか構わなくていい。
自分は一人でいい。
…─孤独がいいんだ。
人と一緒に居て,また痛みを覚えるのはもう懲り懲りで。
人と一緒に居て,また痛みを与えるのはもう懲り懲りで。
…だから,もう。
「嫌だったのに,なあ…。」
大佐の所為で,そんな思いも虚しくいとも簡単に崩れてしまった。
なんでだ,全く。
私大佐に恨まれるような悪いことしましたか?
…答えは否。理不尽にも程があると思う。
彼は,私が人と関わることが嫌いであるのを知っている上で私をそこの金髪と鎧君と行動させている。
どうして
ただそれだけの感情が虚無に広がったんだ。
溜息と称された重い気持ちの塊を吐き出して,列車に揺れる私の荷物を見やる。
…少ない荷物。
女の癖に必要最低限しか持ち歩いていないと言うのはどうなんだろう?
なんて一時期真剣に考えたこともあったのだが,旅をしている間は止むを得ない。
だって荷物は極力少ない方が体力使わなくて済むでしょう?
邪魔にもならないし。
そこまで考えて今度は目の前に座る鎧君の身体を見た。
鈍色の,重たく硬そうな鎧。
彼は何故鎧を着ているのだろう…?
生身では何かまずいことでもあるのだろうか?
優しい声色には似合わない鎧姿に,何か深い理由でもあるのだろうか?
ふつふつと沸きあがるのは,疑問符のつく考えばかり。
「まさか,レナも人体練成を!?」
焦ったような,鎧君の言葉がふと脳裏を過ぎる。
列車に乗り込む前にあった騒ぎで彼が叫んだ言葉だ。
咄嗟に叫んだのだから鎧君自信気が付いていないかもしれないけれど,彼はレナ“も”と言った。
彼等は錬金術師なのだから“人体練成”の知識を持っていると見て間違い無い。
あの台詞から考えて,人体練成経験者と顔見知りなのだろう。
でなければ咄嗟に口走った言葉に“も”など含まれないはず。
もしくは、
彼等,が?
まあいいや。
どちらにしろ,やはり関わりたく無いのは一緒である。
…─別に,人が嫌いだから人と関わる事を拒む訳じゃない。
「寧ろ,好きなんだけどね…。」
ポツリ。
雨粒を落としたかのように,私はそう呟いた。
車内は相変わらず静かである。
04*bygone days
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