稲妻
□寝る子は育つ
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俺の名前を呼び、駆けて来る彼女の笑顔が眩しかった。
今まで感じた事のない胸の痛み。
ずしっと重くて、くうって苦しくて...
でもその痛みが程よくて――
「――…じさん」
な…んだ…?
「豪炎寺さんってば」
「っ、な、んだ」
音無春奈、鬼道の妹だ。
ふと気が付けば音無が俺の顔を覗き込んでいた。
「なんだ、じゃないですよー。豪炎寺さんってば起きてくれないんですもんっ」
少し笑いながらそう言う彼女が可愛い。
そう思った。
「豪炎寺さん、もう部活も終わってみんな帰っちゃいましたよ」
「もうそんな時間か?」
「はい、もうすぐ校門も閉められちゃいます」
「そんなに時間が経ってたとは…すまないな」
「いいですって―。謝るなら私じゃなくてキャプテンや皆さんにお願いしますねっ、ふふ」
あぁそうだな、と言っていそいそと荷物をまとめ帰る支度をした。
部室に鍵を閉め、教務室へ鍵を返し、俺達は校門を後にした。