【斉木楠雄のΨ難】


□【初恋のΨ難】
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Ψ【 ごめん、してる】










─── "好きになってごめん"。


彼女を "好き" になってから、ずっと。

こんな負い目の鎖ががんじがらめのようにまとわりついて離れない、その原因を最初から楠雄はわかっていた。

それは、自分が超能力者だから。

彼女は僕が超能力者だということを知っている。

知っていて、それなのにそんな化け物じみた僕のことを大好きだと言ってくれる。

青い空や月や星や花。

甘いものやかわいいもの。

家族や友達。

それらを好きだと言うのと同じように、超能力者である僕のことすら彼女は変わらずに大好きだと言ってくれる。

だけど僕の "好き" と彼女の "好き" には決定的な違いがあって。

僕が超能力者だということは知っている彼女だけど、

でも互いの想いの決定的な違いについては全然気が付いてはいないんだ。


『きっとくーちゃんが好きになるのは物語の天女か女神さまのようなひとだね!』


こんな "化け物" にも。

人を愛する感情は当然のようにあるのだと彼女は思っている。

こんな "化け物" にも。

人を愛する資格はあるのだと。


『───くーちゃんっ!』


かわいそうに。

僕が超能力者なんかじゃなかったら、僕はこんなにもこの気持ちを拗らせたりなんかしなかったろうに。

だって超能力者じゃなかったら、知らなくても済んだんだ。

おまえという人間がどんなものか。その内面を深く知ることさえなかったら。

こんなにも、僕は。

こんなにもおまえを好きになることなんかなかった。絶対に。


───かわいそうに。


こんな化け物に愛されて。

だけど僕は思ってしまうんだ。

こんな風にひねて捻くれ歪んだ僕の重苦しい愛さえも、

おまえならばまるでどうってことないように笑って認めて、受け入れてくれるんじゃないかって。

『人を好きになるのはとても素敵なことだよ、くーちゃん』と。

人が、人を。

好きになるのは。

とても。

だからこんなにも苦しく辛くても、結局のところ思ってしまうんだ。

僕は、"おまえを好きになってよかった" って。






2016.12.05

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