【斉木楠雄のΨ難 2】

□【365×17】
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こちらは以前アニメ開始記念に先走りで拍手のお礼に掲載していた、両想い後のお話です。

片想い期編ではまだまだ両想いにはなっていないので、ご注意ください!

それでもOK!な方のみどうぞ!










Ψ【365×17】











(くーちゃんは私のどこを好きでいてくれたんだろう?)

(17年間(これまで)思い出(いろいろ)を振り返ったら、どうしてそんなことになったのかがとてもじゃないけど想像つかないよ)

(バカことはもちろんたくさん考えたし、ひどく陰険で辛辣なひとの悪口とかだってたくさん "言ってた" のに、)


"───本当に、どうしてくーちゃんは私のことを好きになってくれたんだろう?"



[・・・・・・・・・]


それはふと聴こえてくる名前の心の声だった。

一緒にいても、それぞれの部屋にいても。

彼女自身特別につよく意識して考えているわけではないであろうそんな心の声たちが、付き合い始めてからというもの楠雄の脳内に時折ふわふわと流れ込んできていた。


"どこを好きになったのか。"


それを改めて問われれば、まさに17年間(これまで)の積み重ねが大きいのかもしれないと彼は思う。

名前とは、生まれてからずっといままで。17年間一緒に育ってきた。

しかし最初の1年は、当然ながら意志の疎通が図れない赤ん坊である彼女の存在はとにかく煩わしいもので、むしろ嫌いな人間リストのトップに名前があったくらいだった。

だけど楠雄がいまでも覚えているのは、赤ん坊の名前が生まれて初めて自分の名前を口にした瞬間のこと。


『───くーちゃんっ!』


舌足らずに、でも一生懸命。彼女は名前を呼んでくれた。

あの瞬間から、名前は楠雄にとって特別な存在になった。

煩わしくて、面倒で。

なのに不思議と "嫌いじゃない" 。

そして何よりも驚いたのは、その後成長した彼女は楠雄が超能力者だと知っていてもなお、ずっとずっと "変わらずに" 側にいてくれたということ。

鳥が空を飛ぶように。

魚が水を泳ぐように。

彼が生まれ持ってしまった超能力(チカラ)を異端なものだと恐れることも排除することもせずに、名前はそれを認めてくれていた。

そんな彼女と長い間一緒に成長してきて、当然ながら不満や憤りを感じるということはしばしばあったものの。

それでも長い間側にいて、一切の居心地の悪さを感じることがないのは家族を除けば名前だけだった。

楠雄は肉だって、骨だって。心だって見透してしまう超能力者。


[そんな超能力者()と一緒にいて、おまえの方こそ不安じゃないのか]


楠雄こそ、そんなことを考えてしまう。

でも。


[・・・心が読めたって読めなくたって、好きな相手に感じる想い(こと)は一緒なんだよな]


相手に自分を好きでいてほしい。

側にいたい。側にいてほしい。

想いを認識してからの名前と自分の望むことに何らのズレはなくて。

それがただひどくうれしかった。



「わっ!く、くーちゃんっ?どうしたの??」

[どうしたのって。おまえが "呼んでた" から来ただけだ]

「えっ?!えぇ〜?!」


楠雄がもうそろそろ寝ようかと思った夜更け。

隣の部屋から聴こえてきたのは、


(くーちゃんもう寝ちゃったかな〜?)

(寝る前にもうちょっとだけ話したいな)


という、またまたほとんど無意識な名前の心の声だった。

諸事情により彼女とはいまはこうしてひとつ屋根の下に暮らしているので、ぶっちゃけ同じ家で夕食をとり、風呂に入る前のほんのさっきまで一緒の部屋で過ごしていたのだが。

それを聴いてしばし思案したあとで、楠雄は布団に入りかけていた足を名前の部屋に向け、きちんと扉をノックした。瞬間移動で訪ねるなんてことはもちろんしない。


「ご、ごめんね!自分ではそんなこと考えた意識はまったくなかったんだけど!気にしないで部屋戻って!寝ていいよ!」

[・・・・・・・・・]


ごめんねと謝りつつも、本心では名前が自分の来訪を喜んでくれていることが楠雄にはわかっている。

まあわたわたと顔を耳まで真っ赤にしてあわてる彼女を見れば、心なんて読まなくたってそんなのは明らかだった。

楠雄だってなんてことはない平常心(ポーカーフェイス)を装ってはいても、自然とニヤけそうになる口もとをごまかすのに実は必死だったけれど。


[別にまだ眠くない。それに来たくなかったらもともと来ないしな]

「 ! 」

[明日は休みだし、少しくらい夜更かししても平気だろ]

「───うんっ!」


これまでと変わったようで、変わってないような。だけどやっぱり全然違う空気感にはまだまだ慣れなくて、くすぐったいような、むず痒い。

そして自分の何気ないひと言に、こんなにも一喜一憂する。

そんな名前の "声" を、自分はこうしていつまでも近くで聴いていたい。

もういままでに幾度となく考えた "そう思える相手に出会えた奇跡" を、楠雄は改めてつよくかみしめた。







おわり!









2016.07.04 拍手お礼に掲載
2016.12.05 お礼から撤去
2016.12.20 加筆修正後 再掲載

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