お話。

□ゆめの国。
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そうちゃんは いつもふわふわとして、掴みどころがない。

「ちょっといってくる」といって、
煙草でも買いにいくみたいに出かけて、
1ヵ月帰ってこない、なんてことは、
わりとしょっちゅうだった。

最初は、寂しく思ったりもしたけれど、
今はすっかりなれてしまった。

昼すぎにゆっくり起きて、
麦茶をのもうと冷蔵庫をあけたとき、電話がなった。
そうちゃんからだった。

「きょう帰ったよ。今からいってもいい?」

「うん、いいよ」

「じゃあ、6時くらいにいくから、
夜ごはん一緒にどこかで食べようか」

「いいよ。作っておくから、食べにおいでよ」

「ほんとう? じゃあビールも買っていこうかな」

「うん、よろしく」

わたしは流しの洗いものを片付け、
洗濯物をとりこんで、じゃがいもの皮をむく。
一緒にごはんを食べるのは、
1ヵ月ぶりなので、どうしてもわくわくした。

6月は、空が高い。
みどり色が、少しずつ濃くなってゆくのがわかる。

春の終わり。雨のはじまり。


旅に出ているときは、どんなものを食べていたのだろう。
どこに行って 何をしていたのかは、
おみやげを見ながら話す。

いつも、そうしているように。

日本らしく肉じゃがとほうれん草のおひたし、
豚肉のしょうが焼き と たまご焼き、
白いごはんと、なめこのお味噌汁にした。

濃い味が好みのわたしは、
気をつけないとすぐにしょっぱくなってしまう。
そうちゃんは、どちらかというと薄味が好きなのだ。




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