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□web拍手ログ
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麗かな休日の午後。
それまで、窓際に立て膝で座っていつものように煙管をふかしていた高杉が、突然手を伸ばして新八の腕を掴んだ。
「高杉さん?どうしたんですか?」
毎度の事ながら高杉の行動はいつもいつも突然で、前振りさえないのだから、未だに予測がつかない。
新八の返事に応えはなく。
自分を掴む手は、がしり、と力強くはあるが、それほど痛くはないので怒っているわけではなさそうだ。(表情が乏しい訳ではないのだが、高杉は怒るときも欲情する時も突然だ)
振り払うことも出来ずに、見上げていると、
今度は何も言わずにその手を引っ張られた。
「う…わっ!!ちょ…高杉さん!?」
反動でそのまま高杉の方へ倒れこんだ新八を、そのまま抱き込み、起き上がれないように両腕を新八の身体に回すと、細い腰には余りあるほど。
「????」
高杉の無言の行動に、意味も分からずされるがままにしていた新八が、視線を上げると、目前にはすぐ高杉の顔があって。
ニヤリと、新八をからかう様な笑みを浮かべてちょっかいを出してくることはしょっちゅうだが、今日みたいに何も言わずに…ということは滅多にない。
「高杉さん?」
不思議に思って新八が呼びかけると、高杉は矢張りなにも言わず、ぎゅうううっと強く抱きしめた。
いつもとは違う抱き締められ方に新八は戸惑ったが、恐らく何を聞いても答えは返ってこないだろうと推測して、そのまま身体を任せた。
とくとくと、高杉の緩やかな心音が聞こえる。
何か、あったのだろうかと心配にも駆られたが、そのうち高杉の方には特に切迫するような雰囲気は何も無いことに気がついて、ほっと息を吐いた。
(何か、暖かい…なァ。)
抱き締められてるんだから、当たり前だけど。
高杉の手は、いつも冷たい。
それなのに、新八を翻弄する手は腕は、信じられないくらい熱い。
新八に触れる高杉の体温は、その両極端などちらかで、だが、今自分を包む柔らかな体温はそのどちらでもなくて。
(あったかくて、なんか、気持ちいい、かも……それに)
(高杉さんの、においがする、し)
先まで吸ってた煙管の香りと、それとは違う少し甘い、高杉自身のにおい。
それが交じり合って。包まれる。
(うわ…なんか…すごい恥かしくなってきた)
かァァっと頬に熱を持つのを、どうにか誤魔化そうと身じろぎしようとした時、新八の肩口に顔を乗せていた高杉が、頃合でも見計らったかのように、新八の名前を耳元で、囁いた。