◇Wonderland dyed red

□Chapter‐1
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その準備の早さに
目を丸くするアリス。

そんなアリスの目の前に
薫り立つ紅茶と
オレンジ色をしたケーキらしき物が置かれる。


「食えよ!
美味いぜ〜にんじんケーキ」


明らかに語尾に(ハァト)
が付いていた。

なるほど
ウサオットの餌か。

にんじんは嫌いじゃない
が、この代物はいかがな物か。


オレンジの物体は無視して
ブラッドに声を掛ける。


「いちお訂正しておくけど
私は今日誕生日じゃないから。

それに…
もし誕生日だとしても
ちっともおめでたくないし」


その言葉に
ブラッドもエリオットも
どうして?という疑問を顔に浮かべ
アリスを見つめた。


「私は…いらない子だから」


物心付いた時から
…たぶん
生まれてから一度たりとも
誕生日を祝った事などない。

私はいらない子だから。


「ならば、私が貰う。
いや、先ほど私が拾ったのだから
すでに私のものだな」


それで問題は解決だとばかりに
優雅に紅茶を飲むブラッド。


人を捨て犬か何かのように…

たとえ捨て犬でも
こんなおかしな帽子の人になど拾われたくない。


横で聞いていたエリオットも
目を潤ませながら主張する。


「そうだぜアリス!
俺だって拾ってやる!!
だからあんたは
いらない子なんかじゃない!」


…ウサ耳には
ちょっと拾われたい。

というか、拾いたい。

 
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