短編

□にんぎょさんの主食
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あるひとり・・・いや1匹と言った方がいいのかもしれません
あるにんぎょさんはとても好奇心が旺盛でした
にんげんには関わるなと言いつけられていたのに、おもしろがってにんげんを見に、地上へ向かうことがしばしばありました

そんなある日、海上を客船が走っているのに気付いたにんぎょさんはにんげんに会えると思い、わくわくした気持ちを胸に客船の方へ向かいました

船が海をかきわけて進むのでその反動で作られた人口的な波に圧されてうまく泳げませんでした

その時尾びれにチクッと何かが刺さる痛みがした
海が少しにんぎょさんの中に流れている赤い液体に染まりました

その海の青とにんぎょさんの赤に染まるのをぼんやりと見ているとぐっと尾びれが引っ張られたのです

じゃぼん、と音がしてふっと上がった感覚があった瞬間に床に叩きつけられました

肋骨が何本か折れたような気がしました
するとにんぎょさんに向かって誰かが言葉を振りかけました

「あぁ?、人魚が釣れたのか?・・・しかもこの人魚女の格好してないぜい?」

「ほんまだ・・・」

「乳がまったいらじゃねぇかい」

そう言ってにんぎょさんの胸や腹をいやらしく舐めるように撫でました

にんぎょさんは肋骨が折れていたし、何しろ海の中ではなかったので身動きが取れませんでした

『やめろっさわるなっ!』

にんぎょさんは必死に訴えました
しかし、にんげんの言葉とにんぎょさんの言葉は全く違うものだったのでにんげんには伝わらず、ただあざ笑うだけでした

「よく見ると可愛い顔だなぁ」

上半身を駆け巡っていた手のひとつがふと頬をすっと撫でました

「こんな珍しいモノだいぶ儲かるんじゃねぇか?」

「見せもんにすんのかぁ?それもいいな」

「でも、人魚の血肉は不老不死の特効薬とも聞くぜい」

「そうなのか・・・まぁ上半身はともかく下半身はサカナちゃんだもんなぁ・・」

そこに居るにんげんたちの瞳がギラギラと輝き、にんげんたちのひとりが刃物を持ち出してペロリと一枚鱗を剥ぎました

『うぅあ゙あ゙あ゙ああっぐぅ・・』

にんぎょさんはものすごい激痛に襲われました
そんなことを気にもとめないにんげんは次々と鱗を剥いでいきます
少し血に塗れた鱗を集めて加工し、高値で売ろうと考えたのでしょう
一枚一枚剥がれていくのを、ただじっと見つめることしかできませんでした
両腕をにんげんに押さえつけられ身動きがとれなかったのです
魔法を使ってやろうかと思ったのですが魔法でにんげんを殺してしまうと、海の悪い魔女たちに喰われてしまうので思い止まりました
酷い苦しみと痛みで頭がおかしくなりそうでした



───────



途中で気を失っていたのか気付くと浜の方にうちあげられていました
意識が戻るにつれて鈍く重い痛みが下半身にはしりました
目を下半身に向けるとほとんど身は残っておらず骨がみえる程でした

『うっ・・・うっあああああああっ』

もうほとんど獣のような声でにんぎょさんは叫んでいました
顔も醜く歪みもう骨しかない下半身をさげずみ、それでもなお生きている自分に恐怖を感じてしまいました

『怖いっこわいこわいこわいっ・・・・・・・・なぜ僕は生きている?いっそのことあの時にっ・・・うあああっ』

時間が経つにつれて、にんぎょさんは自分がされたおぞましい行いを思い出してしまいました

鱗を一枚一枚剥がしていくだけではなく、悲痛な声ににんげんさんは欲情し口の中に熱の籠った硬いモノを出し入れされ気持ちの悪さに噛み千切りました
すると、そのにんげんは死んだのですが思いっきり殴られて「次やると目を繰り抜くぞ」と言われてしまいました
瞳から水が出てきていました

『つらい・・・かなしい・・・・いたい・・』

急にあの白濁液の味を思いだしてしまい、ひどい吐き気に襲われました

『うっ・・・・お゙ぇっ』

腹の中から異物が込み上げてきて、そのまま吐いてしまって意識が薄れていきました
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