Master key
□第1に忠誠の誓いを立てましょう。
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「さて、どうするかな…」
おそらくここは化学準備室だったところだ。
だからといって僕には一般人レベルの知識しかないから薬品を使ってかっこよくミッションクリアってのは難しい…。
僕だけがこの場所にいる訳ではない。
だから、仲間を作ればいいのだ。
「まぁ、ここから出られればの話なんだけど…」
外側からがっちり鍵がかけられていて、ここから出られそうにない。
うーん…。
ここにあるのは埃まみれの薬品と、過去のプリントと、クリップ。
…ん?クリップ?
王道っちゃー王道というか。
オーソドックスと言えばオーソドックスなこいつを使ってみましょうか。
埃のついたクリップを手に持ち扉の鍵穴を見つめる。
「どうか!どうか!この下劣な僕に開錠という名の幸運を我に捧げたまえくださあああああい!!!!」
なんか色々間違っているような気がするけど、この際なんでもいいや。
恥ずかしがり屋故に丸まった可愛いこいつを存分に伸ばしてそっと優しく繊細にこの鍵穴にクリップを差した。
「あっ、ダメっ。そんなっ///まだ、覚悟が出来てないのに//あんっ///らめえええええええええええええええええええええ」
「誰だよ」
なんか後ろから不快な声が聞こえてきた。
実験の机に隠れていて奴は見えない。
「ハァハァ…ぐへへ…今クリップ×鍵穴で滾っていたところであります。決して不審者などではないです」
「いや、十分不審者だ」
「ひぃいい尖ったクリップの先をこちらに向けないでくださいっ」
「あいにく僕は萌え豚であって腐男子ではないので無機物を擬人化したものに興味などない」
そう、僕は純粋にオタクなだけであってだな…。いや、にわかオタと言った方が正しい。
全国のガチオタの人に失礼だ。
「もしかして仲間ですか?」
「あ?」
「ぼ、ぼきゅと共にここから一緒に出てください!!!」
気持ち悪い腐男子(推定)は突然僕の方に近づいてきてパッと手を握ってきた。
お…、こいつ前髪で顔見えなかったけどなかなかのイケメン様だった。
うそだろ…あんな気持ちわりぃこと抜かしておいてこの顔面…。
神様は不公平だな…。
まぁこいつがいくら顔が良かったとしても悪かったとしてもだな、手を組むのは悪くない。
「よし、いいだろう。手を組もう」
僕はクリップを持つ手をおろし反対の方の手を挙げた。
彼はニコッと笑いその手を取った。
「僕は、篠崎 綾瀬。17歳。もう知ってる思いますけどオタクです。決して腐っていません。断言します。あと童貞です」
「どうでもいい情報ありがとう」
篠崎はヘラヘラ笑っていた。
今はもう前髪で顔が見えない。
「とりあえず、こいつで開けるとするか」
こう見えても僕はそこそこ器用である。
「あ、篠崎。さっきのへんなセリフはくれぐれも吐くなよ。集中できないから」
「さすがにそれはもうしませんよ…」
ガチャガチャ…
「よしっ開いた」