novel

□羽虫のように
2ページ/3ページ

はぁ、とため息をつく。
あんなもの、見なければよかった。
おかげで今日はぜんぜん授業が頭に入らなかった。
今だって生徒会の仕事がまるで手につかない。
あんな…あんな事…
「無理だ…」
私は視線を落とし自分の胸を両側から寄せてみる。
「……やっぱり無理、だな」
もう一度ため息をついた時、
「美咲ちゃん何してるの?」

いきなり声を掛けられて慌てて手を離す。
どうしてこいつは、いつもいつもタイミングが悪いのか…
「何もしてないっお前こそ役員でもないのに勝手に入ってくんなっ」
「ちゃんと声かけたよ。でも美咲ちゃんずっとブツブツなんか言ってるし、気付かなかっただけだよ」
「ずっと?お前いつから居たんだよ」
「さあ?10分くらい前からかなぁ、それより美咲ちゃん、さっき胸押さえてたでしょ。痛いの?大丈夫?」
私を覗き込むその顔には意地悪そうな笑みが浮かんでいる。
「っおまっ…心配なんかしてないだろ」
碓氷は睨む私に構わず声だけは心配そうに、しかし意地の悪い笑みを浮かべたまま続ける。
「心配してるよ?美咲ちゃん今日はずっと変だったから。俺の顔見て赤くなったり、ため息ついたりしてたでしょ。だから、本当に心配だったんだけど…」
いったん言葉を切った碓氷はちらりと私の胸を見て、
「自分で揉むくらいなら俺が揉んであげるのに」
笑いながら自分の唇をなめる碓氷に私の心臓が跳ね上がる。

「バカな事言うなッそれに…揉んでない」
「そお?なんかぐにぐにしてたけど。じゃあナニしてたの?」
−−−言いたくない。言いたくないけど、こいつのことだ。私が言うまで付き纏ってくるだろう。
「−−昨日、さくら達と見て、私には無理だと確認しただけだ」
くそっ何でこんな事をこいつに言わなきゃいけないんだ……
睨む私の顔は真っ赤になっている事だろう。
だけど、目を逸らしたら負け、な気がする。

「説明になってないよ。何を見て、何が無理なのかちゃんと教えて」
ニヤニヤと笑いながら言う顔を見て確信する。
絶対にこいつは気付いてる。
「変体宇宙人め…分かってるんだろ」
「うん、大体ね。でも違うかもしれないから美咲ちゃんから直接聞きたい」
悪戯な声に後押しされ私は白状する。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ