novel

□キャンディ
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頬を朱く染め上目遣いで碓氷を見つめ、美咲は考える。
その何気ない仕種が碓氷を追い詰めているとも知らずに。

目が合えばいっそう切なそうな表情をする碓氷の頬に手を添え、美咲は意を決したように口を開いた。

「−−−今、何を考えている?」

美咲の問いに、一瞬だけ身じろぎした後、
碓氷は自らの頬に触れる美咲の手に自分の手を重ね、指を絡ませながらはずし、美咲の指先を軽く舐める。
ぞくりとする感覚に美咲は更に顔が朱くなるのを感じる。

美咲の指先を名残惜しそうに唇から離し、なんでもないよ、と囁く碓氷を真っ朱な顔で睨み付ける。

「何でもなくないだろうがっ」

少し不機嫌そうな顔をして食い下がる美咲に、碓氷は観念したかのように短く溜息をついた。

「本当に、何でもないよ。ただ鮎沢が可愛くて困ってただけ。」
「?なんでそんなことで困るんだ?」

と言うか私は別に可愛くないんだが…と本気で理解できていない彼女を安心させるために抱きしめる。


彼女が可愛すぎるってのは贅沢な悩みなのかな?
熱くなり始めた下半身と、抱きしめた彼女の柔らかさに苦笑する。




“いつか、覚悟してね。鮎沢”


そんな思いを込めてもう一度口づけをした。








END
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