novel 2

□BEAMS(R‐18)
1ページ/3ページ


−−−暑い……。

夏の日差しは攻撃的なほど肌を刺し、いっそ痛みをもたらす。
本当ならこんな日は、外になんか出ずに冷房の効いた部屋で一日中過ごしていたい所だけど、そうもいかない理由がある。
夏休みになっても相変わらず忙しい彼女との時間を作るためには、少しくらいの暑さに怯んでなどはいられない。

土曜日だというのに生徒会の仕事があると言って、俺を袖にして登校した彼女のために作った弁当を携えて、俺は決意も新たに学校へと足を向けた。

生徒会室の扉を開けると、驚いた顔の彼女が俺を出迎える。
「お前、何しに来たんだよ」
驚きを隠しもせずに問いかける彼女に、手に持った紙袋を掲げて笑顔を向ける。
「ヒマだから、鮎沢とお昼食べようと思って、来ちゃった。」
「来ちゃったて、お前…」
俺は呆れたといった風に呟く彼女の頬が染まった事に気づかないふりで言葉を続ける。
「仕事の邪魔はしないから、待っててもいいでしょ?」
言いながら、俺の指定席となった彼女の隣に椅子を運ぶと腰を下ろす。
「−−−邪魔だけは、するなよ…」
口元に浮かぶ笑みを噛み殺して、無理に怒った風を装う彼女に、俺は頷いてみせた。



彼女の仕事が一段落したのは、12時を少し回ったところだった。
俺が作ってきたサンドイッチを広げると、彼女は驚嘆の声を漏らす。
「すごい、うまそうだな…」
「ありがとう、これも飲んでね」
俺は彼女の賞賛を素直に受け取ると、水筒を傾けてコップに琥珀色の液体を注ぐ。
冷たくひやして甘みを抑えたミントティの涼やかさに、彼女が顔を綻ばせる。
そんな彼女が可愛くて、ついつい意地悪をしたくなる。
「鮎沢、アーンして」
俺はサンドイッチをひとつ摘まむと彼女の口元へ運ぶ。
「いらん、自分で食える。」
そう言って彼女は顔を真っ赤にして俺が口元に運んだサンドイッチから顔を背ける。
「ひどいなあ…せっかく暑い中、可愛い彼女にお弁当を届けに来たんだから、少しくらい労をねぎらってくれてもいいのに」
「−−どういう理屈だ…」
頬を染めたままで顔を顰める彼女に、笑いをひとつ漏らす。
そんな風に満ち足りた時間は瞬く間に過ぎて行き、やがて静かだった校庭から様々な音が聞こえてくる。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ