novel 2

□LET'S DANCE(R‐18)
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俺は今、いわゆるお預けを喰らっている。
手を伸ばせば届く距離に可愛い彼女が居るのに、彼女は俺に目もくれず、携帯を片手に難しい顔で書類に目を通している。

明るいうちから彼女が俺に応じてくれるなんて、本当に珍しい事で、俺は彼女の気が変わらないうちにとばかりにその唇にむしゃぶりついて彼女を生まれたままの姿にした所で、携帯が鳴ったのだ。
放っておけばいいよと言った俺の言葉は直ちに却下され、彼女はシーツを身体に巻き付けるとサイドテーブルに置いた携帯に手を伸ばし、今に至ると言うわけだ。

手持ち無沙汰な俺は、何度も彼女に手を伸ばしては、にべも無く打ち払われる。
俺は仕方なく彼女の電話が終わるのを、今や遅しと大人しく待っている。
暫く遣り取りを交わした後、ようやく電話を切った彼女は、大きくため息をつくと眉間にシワを寄せたまま携帯と書類をサイドテーブルに置く。

「碓氷、悪い…どうやら書類に不備があったらしく、作り直さなきゃならないみたいだ」
そう言って立ち上がろうとする彼女の腕を慌てて掴む。
「待ってよ鮎沢、それって今すぐじゃなきゃダメなの?」
「いや…そうじゃないが、煩わしい事は早めに片付けておきたいと言うか…」
頬を赤くした彼女の声はだんだんと小さくなっていき、困ったような顔で俺を見上げる。
「ダメ…急ぎじゃないなら、離さない」
「だけど、明るいうちからなんて、やっぱり恥ずかしい…」
もじもじと桜色に染まった彼女に、理不尽な怒りが沸いて来る。
「鮎沢、苛めていい?」
「はっ?いきなり何を言い出すんだ、お前は」
「だって、俺をほったらかしで他の男とずっと喋ってるなんて……その上いい子に待ってたのに、ご褒美も無しなんて、あんまりじゃない?」
「だから、悪いって…」
巻き付けたシーツの胸元を押さえて、口を尖らせた彼女は少し首を傾げて上目遣いで甘えたような視線を俺に送る。
「それに、他の男って言っても、相手は幸村だし…」
「だから何?幸村だって男でしょ。忘れたの?俺が独占欲強いって事……だったら、二度と忘れないようにしなきゃね」
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