novel 2

□勝手にしやがれ
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それなりに楽しかった修学旅行も終わり、俺は久しぶりにあいつと二人で放課後の屋上に居る。

「はあ……、なんっにもなかったな…」
聞いているのかいないのか、ぼんやりと空を眺めて座るあいつは、男の俺が見てもいい男だと見惚れてしまう。
「お前は、なんかあったか?」
「んー……まあ、それなりかな…」
少しだけ口角を上げてはぐらかす碓氷に、俺は悔しさを増す。
「あったんだな……、クソっ俺も修学旅行のエロ話、聞く側から話す側に回る気だったのに…っ」

俺がそう言うと、ぼんやりとしていた碓氷は徐に俺の方を向き、問い掛けた。
「武沢、それ本気で言ってるの?」
眉を顰めて窺う碓氷に、俺はたじろぎながらも反論する。
「なっ何だよ、そりゃお前ほどじゃないけど、俺だって結構イイ線いって…」
俺の台詞を途中まで聞いていた碓氷は、大袈裟な程のため息で反論を遮る。
「そうじゃなくてさ…、話す側って事は自分の彼女の事をみんなに話すって事だよ?しかもエロ話って……まあ、ある意味 勇者だよね……。」
俺なら絶対しないけど、と言われてハッとする。

得意顔で話す奴等を羨ましく思うだけで深く考えなかったけど、そうやって言われると急に生々しく甦り、俺は赤面してしまう。
確か話してた奴の中にはウチの一年と付き合ってる奴も居たっけ……。
うわっ…どうしよう…、もうあの子の事、そう言う目でしか見れないかも……。

「ね?武沢は今まで気付いてなかったみたいだけど、俺なら自分の彼女が他の男にそんな目で見られるなんて、我慢できないけどね」
淡々と語る碓氷に俺は感心して唸る。
「−−そうだよなあ…もし自分に彼女が居て、その子の事を変な目で見られたら、嫌だよな……」
うんうんと頷いて、はた、と気付く。
なんだか、碓氷の言い方だと、まるで…−−。
「なあ、もしかしてお前って、彼女居るのか?」
我ながら間抜けな質問だと思うが、碓氷もそう思ってるんだろう、…視線が痛い。
「居ないなんて、言った覚えがないけど」
確かに、居ないなんて俺も聞いた覚えがない。
だけど普通は“彼女ができた”って言われなきゃ、居ないと思うものなんだよと、平凡な一高校生てある俺は、心の中で抗議する。
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