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□愛撫
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【愛撫】
退屈な授業に窓の外を見ると、すぐに彼女が目に入る。
アップにした白いうなじに視線が吸い寄せられ、笑う口元に妄想が膨らむ。
昼の彼女は凛として清らかで、だからこそ汚したくなる。
俺の視線に気付いた彼女に小さく手を振ると、彼女は微かに頬を染めてすぐに目を逸らす。
俺の視線を知りつつ決してこちらを見ない彼女に膨らむ妄想を重ねると俺の中に熱が生まれる。
(誰にも見せないで閉じ込めるて、穴という穴を俺で塞いで、俺に狂わせてやりたい)
昏(クラ)い妄想は抗うには甘美過ぎて、俺を捕らえる。
だけど、妄想は妄想でしかなく、俺は昏(クラ)い想いを振り払うようにかぶりを振り、改めて青い空の下の彼女に目を向けると、こちらを見上げる彼女と視線が絡み合う。
真っ赤になった彼女は怒ったような、困ったような表情を浮かべてほんの少しだけ手を挙げて俺に合図を送り、すぐに背を向ける。
素直じゃない彼女の精一杯に、俺は昏(クラ)い妄想に蓋をして倖せな現実に微笑んだ。
end