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□WHITE BREATH
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【WHITE BREATH】



−−雪、だ…。

今年何度めかの雪が、寄り添って歩く俺達の上に降りてくる。
このまま降り続けば、明日の朝には景色は白く染まるだろう。
そう考えると、俺の頬は自然と緩みだす。

「何ニヤついてるんだよ」
緩んだ俺の頬を見咎めた彼女が、白い息で尋ねる。
「ん…?雪だな、と思って」
「なんだお前…雪が嬉しいなんて、子供みたいだな」
俺の漏らした言葉に、彼女が目を細める。
そう言いながら笑みを零す彼女こそ、雪に喜ぶ無垢な少女のようで、俺の笑みもいっそう深くなる。
「雪が嬉しいんじゃなくてさ、寒いと鮎沢は外でも甘えさせてくれるでしょ?」
片方の手袋を脱ぎながら言った台詞に、寒さ以外で頬の色を濃くした彼女も俺を真似て手袋を脱ぐ。

ひんやりとした外気を感じる手を差し出すと、彼女の手がおずおずと重ねられ、そこから伝わる温もりが全身に広がる。
「あったかいね……、でも、手だけじゃなくて、もっと暖めて欲しいな」

指を絡めて繋いだ手をコートのポケットに入れて歩き出す俺に、頬を染めた彼女は俯いたまま歩調を揃えた…。



end

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