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□DREAM OR TRUTH
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【DREAM OR TRUTH】



「寒いね…」
執務に勤しむ私の隣で、碓氷が私に同意を求めるように声をかける。

毎日のように生徒会室に来るこいつは、当然のように私の隣に腰を下ろすと、特に何をするでもなく私の仕事が終わるのを待つ。
最近は役員の皆の仕事が早くなったおかげで、帰宅が遅くなる事はなくなったのだが、こうも早く二人きりにされては私の仕事がはかどらない。

「寒いね」
「−−もうすぐ冬だからな」
いつまでたっても返事がない事に不満を覚えたように声をかける碓氷に素っ気なく返事をする。
「うん…そうなんだけど、寒いよね」
「そんなに寒いなら、校庭でも走ってきたらどうだ」
私がため息混じりに答えると、碓氷はわざとらしい程ガックリと肩を落とし拗ねたような瞳を向ける。

「じゃなくて、鮎沢は寒くないの?」
拗ねた瞳のまま問われ仕方なく口を開く。
「まあ、寒いな…」
仕方なく答えたこの言葉に、碓氷は人の悪い笑みを浮かべると意味深な視線を私に送る。
「そっか…、鮎沢も寒いんだ…」
「だからなんだよ……」

碓氷の笑みに何か嫌なものを感じながら睨みつけると、碓氷は私の鞄を持って立ち上がる。
「おっおい、碓氷」
慌てて碓氷に声をかけると、碓氷は声をひそめて囁く。
「寒いんだから、温めてあげるよ。−−俺の部屋でね」
囁かれた台詞に、顔が熱くなる。
「まだ仕事が終わってない…」
無駄だと知りつつ弱く抗議する私に、碓氷が見惚れる程の微笑みを見せる。
「大丈夫だよ、手伝ってあげるから、すぐに終わるよ……。もちろん、俺の部屋で温まった後だけどね」
碓氷はそう言うと私の唇を塞ぐように口付けた。



end

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