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□MOON AND THE MEMORIES
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【MOON AND THE MEMORIES】



真夜中、目が醒めて腕の中に彼女がいない。
それがどれほどの恐怖か、きっと彼女は知らない。

『目が冴えてしまって』
『起こしたら悪いと思って』

そう言いながらリビングで教科書を広げる彼女を見つけて胸を撫で下ろす。

「寂しいから、ここで寝ていい?」
再び襲ってきた睡魔に抗えそうになく、俺はソファに身を沈める。
「は?寝るんなら、ベッドに行けよ」
「……ヤダ…」
「ヤダじゃなくて、こんな所で寝たら風邪ひくだろ」
彼女は呆れたように言うと俺を起こそうと肩に手をかける。
「ここがいい。だって、ベッドには鮎沢がいない…から……」
だんだんと重くなる口は、俺の飾ることのない想いを彼女へ伝える。

「アホ碓氷…」
眠りに落ちるその間際、俺の唇に柔らかな彼女の唇が重ねられた。



end

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