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□FLY HIGH
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【FLY HIGH】
“恋人”……くすぐったいような、気恥ずかしいような響き。
あいつの視線の先に在るのはいつも私で、私の視線の先にもいつもあいつがいる。
手を伸ばせば暖かく包み込まれ、身体を預ければ、逞しい腕で強く抱き締められる。
たったそれだけで早鐘のように脈打つ心臓は、私を朱に染め、熱を生み出す。
だけどそれはちっとも嫌な事じゃなくて、それにあいつの胸に顔を埋めた私の耳にも、私と同じように高鳴る鼓動が聞こえる。
心地好い熱に任せてあいつの背中に腕を回せば、唇が掠め取られ、私を抱く腕に更に力が篭る。
「碓氷…」
掠めるだけのキスでは足りなくて、そっと名前を囁く。
そうすれば、求めるものは与えられる。
息が出来ない程の深い口付けに、私は身を任せた……。
end