novel

□SABBAT(R‐18)
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夢見たのは、彼女の笑顔。
願ったのは、彼女との明日。
想いを手放す事も出来ずに、歪み過ぎた現実が重くのしかかる。
それでも、彼女を求めて止まらない。

心が手に入らないなら、少しづつ壊していけばいい。
そうすれば、残るのは身体だけになる。
自分の中のドス黒い感情に反吐が出る。
こんなにも 醜い俺を暴いた彼女は、それでも愛しくて……。


彼女の整った顔に薄く化粧をのせていく。
もはや俺の一挙手一投足が彼女に疑念を抱かせるらしく、険しい顔で身構える彼女を安心させるように、欲望を隠して俺はうそぶく。
「恐い顔しないで。一緒にデートしたいだけなんだから」
「デートって……外に出てもいいのか?」
俺の言葉を訝りながらも喜びを見せる彼女の唇に紅を掃くと、楚々とした彼女の容貌が際立ち、目茶苦茶にしてやりたい衝動に駆られる。

俺は黒い衝動を押さえて彼女に紙袋を渡す。
「着替えてきて、きっと似合うから」

「寒い季節の方が、月は綺麗だよね」
瞳を潤ませて俺の腕に縋り付く彼女に語りかける。
「久しぶりだね。二人で夜の道を歩くのも…」
そんなに昔のことでもないのに、懐かしいと感じるのは、捨て切れない恋情のせいなのだろう。

くるくるとよく変わる表情で、子猫のように拗ねたり甘えたりした彼女は、もういない。
−−−馬鹿な感傷だ。
俺は彼女を手に入れ、搦め捕った。
欲しくて堪らなかった彼女は今、俺だけのものだ。
それ以上に何を望む?

寒さのせいだけじゃなく微かに震える彼女の耳に口を寄せ、囁く。
「そんなエロい顔してると、みんなにバレちゃうよ?」
「−−−っ」
俺の台詞にビクリと身体を硬くさせる彼女の頬は上気し、潤んだ瞳は艶を増して濡れた唇は甘い吐息を漏らす。
「まあ仕方ないか…美咲ちゃんは、恥ずかしいと感じちゃうんだもんね」
「っそんな事…」
「なんならここで、スカート捲くり上げて、みんなにどうなってるか見て貰う?」
頬を染め、腕を絡ませる彼女と、その耳元に囁きかける俺達は、幸せな恋人同士に見えるだろうか。
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