novel

□くちづけ(R-18)
1ページ/4ページ


歪んでしまった関係は、いつかもとに戻る事が出来るのだろうか。

“愛してる”と悲しく囁く碓氷を、
受け入れることも、拒絶することも出来ない。

いっそ憎むことが出来たら、楽なのに。


「おいで、鮎沢」
差し伸べられた手をとり、私を呼ぶ声に従う。
「今日はプレゼントがあるんだ」
いぶかしげに見る私に、これだよ、と見せる。
それは、革で出来た赤いチョーカーだった。
「着けてあげる」
そう言って碓氷は私の首にチョーカーを着けさせた。
「ああ、思ったとおり、よく似合うね」
碓氷は指先でチョーカーをなぞりながら満足げに呟いた。
「これはね、鮎沢が俺のモノだって言うシルシ」
口の端を歪めて笑う碓氷を直視できなくて下を向く。
「−−−なるほど、首輪と言う訳か…」
「…そうだね。もともとアクセサリーは奴隷を繋いでいた鎖の名残だって言うしね」
お互いの言葉にお互いが傷つきあう。
何故こんな風になってしまったんだろう。


「鮎沢…」
頬に手を添え、私を引き寄せ口付ける。
あの頃と変わらない口付けに涙が零れる。
だけど、私達は変わってしまった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ