novel

□残骸(R-18)
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「ただいま。」

俺はそう言って部屋の扉を開ける。
返事がない事は分かっているが、帰ってきたことを一人ベッドで留守番をしている飼い猫に告げる。
気配が伝わったのか眠っていた身体を起こして俺を見つめ、何か言いたげに口を開くがそのままやめてしまう。

最近飼い始めた黒い猫。つややかな毛並みにしなやかな身体。
それに合わせて、首元には細く赤い首輪。
もう一度ただいま、と言いベッドに腰掛けるとビクリとして身体を硬くさせる。

その様子がおかしくて、俺はつい笑ってしまう。
「そんなに嫌がらなくても良いと思うんだけど。」
言いながら唇を舐めると俺を押し退けようと腕を動かす。

「イヤなの?」
少し強い口調で聞くと、押し退けようとしていた腕を止め、不安そうな顔をして俺を見上げる。
「そうじゃない…。まだ慣れないだけだ…。」
眉を寄せ、呟くように言う彼女に俺は質問する。
「−−−鮎沢は、俺のなんだったけ?」
「ッ−−−…。」
息を呑み、手をきつく握り締めている彼女に畳み掛けるように続ける。
「ねぇ、俺の、何?」
「それは…」
涙目で俺を睨み付ける彼女の顔は、この上もなく朱く染まっている。
「言えない?じゃあ教えてあげようか。鮎沢は、俺の“ペット”」
俺の言葉を聞いて悔しそうに顔を伏せる。
屈辱に耐えるかのように目を閉じる彼女の頬に手を添えて上を向かせると、
一瞬だけ俺を睨みすぐに視線をはずす。
そんな彼女にかまわず口付けを落とす。
微かに身じろぎするだけでそれ以上の抵抗を見せない彼女の首筋に唇を滑らせ耳元で囁く。
「いいよ。ゆっくり俺に慣らしてあげる。」

「…ゃあ…。」
弱々しくかぶりを振る彼女を無視して、唯一身に着けているシャツのボタンをはずして行く。
「ほら、俺を誘って?優しくしてあげるから。」
「やっ…ゃだ…」
「や、じゃないでしょ。それとも酷くして欲しい?」
俺はどっちでも良いんだけどね。と言いながら彼女の身体を押し倒すと、閉じられた瞳から涙が零れる。
「碓氷…許して…」
そう口にする彼女に劣情を刺激される。
本当に、優しくしてあげようと思うのに、こんな姿を見ると押さえが利かなくなる。



−−−手加減も、できないな。
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