novel
□キャンディ
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「…はぁ……」
深い口づけを交わした後碓氷は美咲を抱き締める。まるで大切な宝物を抱くように、強く、優しく。
碓氷は腕の中で顔を朱く染めて、それでも幸せそうな笑顔を浮かべる美咲を見て、頬が緩むのを感じた。
−−−−まいったな…
抱き締めた美咲の髪を梳きながら、碓氷は心の中で苦笑する。
こんなふうに安心されると、これ以上はできないな…。
ちらりと、17才の健康な男子の欲求が顔を覗かせる。腕の中で頬を染め、瞳を潤ませている美咲を見ているだけで幸せを感じると共に、湧き上がるこの欲求は日に日に強くなっていく。
碓氷は限界がそう遠くないことを感じていた。
どうしようか…。
一番の解決策は、鮎沢が俺に応えてくれる事だけど…。
考えて、少し笑ってしまう。
彼女が気付くとは思えない。
むしろ気付かれて、今の関係が壊れてしまうことのほうが、怖い。
それなら、まだ我慢ができる今のうちに距離を置こうか−−−−
それも出来ない。知ってしまった“幸せ”
彼女にのみ与えられるこの温もりを、もう手離すことは出来ない。
だけどこのままでいたら、いずれ彼女の意思を無視してでもこの欲求に従がってしまうだろう。
本当に、どうしようか。
自嘲気味に唇を歪める碓氷の顔を見て、美咲は何ともいえない気持ちになる。
いつからこんな表情をしていたんだろう。
薄いから与えられるキスに安心して身を任せられるようになったのは最近のこと。
それでもやっぱり恥ずかしくて、まともに顔を見れなくて、碓氷の胸で朱くなった顔を隠すようにしていたから…
−−−−私はまたこいつに“我慢”させているのか?