novel 4
□囁き
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「…美咲?」
ぴったりと背中に寄り添う妹の気配が変わり、呼びかけに無言の寝息が返される。
(やっと眠ったか…)
毎夜俺のベッドに忍んでくる妹を可愛らしく思う半面、煩わしくも思う。
甘やかされて育った妹は、俺の邪(ヨコシマ)な思いにも気付かず無防備に幼い寝顔を見せる。
(いい加減、止めさせないと…)
いつか絶対に間違いが起きる。
今だって寝息を漏らす唇の誘惑になけなしの理性で必死で堪えている。
「美咲…」
俺は出口を求めて滾る欲望を解放する為にベッドからそっと抜け出した。
今や習慣となった深夜のシャワーで我慢を重ねた欲幹に手を伸ばす。
(この歳になって、オナニーが日課とはな…)
俺は苦々しく唇を歪めると熱杭を扱(シゴ)く。
(…あの細い身体を犯したら、どんな声を上げるんだろう)
罪深い妄想の中で妹は俺の言いなりに身体を開き、淫らな言葉で俺をねだる。
(−−最低だな)
誰よりも何よりも大切な女を蹂躙する架空に、俺の醜い欲望が手の平に熱い飛沫を吐き出させた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
最近のお兄ちゃんは、少し冷たい気がする。
以前なら私がベッドに潜り込んでいる事に気付いても、背中を向けるなんてしなかったのに…。
(やっぱり、本当の妹じゃないから仕方ないのかな…)
それでもお父さんとお母さんが事故で亡くなった時に、私を引き取ると言った親戚に大切な妹を手放す気はないと言って、ずっと一緒にいてくれた。
だから私は、ずっと“妹”でいようって決めたのに…。
私はお兄ちゃんの事を考えると決まってチクリと痛む胸に手を当て大きく息を吐くと、持ち主のいないベッドで淫らな行為をおずおずと開始する。
(お兄ちゃん、今日も遅くなるって言ってた)
社会人になってから帰宅の遅くなったお兄ちゃんを待つ間、お兄ちゃんを想って自分を慰める。
妄想の中ではお兄ちゃんは私を“妹”ではなく一人の女性として扱(アツカ)ってくれる。
「お兄ちゃん…」
お兄ちゃんと、キスしたい。
もっと…キスだけじゃなくて、その先も…。
「っぉ兄…ちゃん…っ、あ…ん、あ…」
お兄ちゃんにとって妹でしかないなら、せめて妄想の中だけでは恋人になりたい。
私は切ない想いで硬く尖る小さな痼(シコ)りに指を這わせた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
久しぶりに早く帰宅できた俺は、今日もどうせ俺の部屋で寝ている妹を驚かせようと静かに玄関を開け、足音を立てないように自室へ向かう。