novel 4

□宇宙サーカス
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−−−人は見た目が9割…。
何年か前に流行った本のタイトルが、隣に座る男を見ていると真実であると私に伝えてくる。

『いいなぁ会長…』

妬みや嫉みなどではなく純粋に羨ましいと告げる声でしみじみと言われた言葉に、承服できかねる私の視線は自然と険しいものとなって男に注がれる。

『王子様、だよね』

−−どこが。
こんな変態が王子様だなんて、本物の王子様が聞いたら泣いて怒るぞ。



「まったく…。本当に見る目がない」
ため息とともに独り言を漏らした私の肩に、件の男がそっと腕を回す。
「そろそろ考え事は終わった?」
近付く唇は一瞬だけ私の唇に触れるとすぐに離れて綺麗な弧を描く。
「それで、見る目がないって何のこと?」
再び近付いてくる唇に、ドキドキと騒ぎ出す鼓動を隠すように顔を背けて白状する。

「…星華の女子が、お前のことを『王子様』だなんて言うから、見る目がないと思っただけだ」
その言葉に笑い声を上げた碓氷は、背けた私の顔の顎を掬い自分の方へ向けさせると唇をペロリと舐める。
「王子様だよ。もちろん、鮎沢だけのね」
「ッ…!…そうじゃなくて、お前の事を『草食系の王子様』って言ったんだ」
くすくすと笑い続ける碓氷は私の首筋に唇を這わせ、長い指が体のラインをなぞる。
「いいんじゃない?どっちかって言うと草食系だと思うし、間違ってないと思うよ」
私の服を脱がせながらそんなことを嘯く碓氷は下肢に指を伸ばし耳朶を食む。
「ン…こんなこ…と、する奴の……どこが、草食…系…」
「俺が抱きたいと思うのは鮎沢だけだよ。世界中に30億以上の女がいて、抱きたいと思うのが一人だけなら立派に草食系でしょ?」

薄布の上から秘裂を弄ぶ碓氷は前をはだけた私の胸に顔を埋める。
「それに、知ってる?草食獣の交尾って意外と濃厚なんだよ」
起ち上がった頂を尖らせた舌で転がす碓氷が挑むような眼差しで私を見上げる。
「それじゃあ今日は、鮎沢の期待に応えて草食系のセックスを実践してみようか?」
淫らな核を薄布の上から摘ままれて戦慄く蜜壷が愛蜜を溢れさせる。
「ふふったっぷり時間をかけて何も考えられなくなるまで可愛がってあげるからね」
「ッ…や…ぁ、ん、っだめぇ……」
私の否定などすぐに意味のないものに変わるほどの愉悦を与えられ、碓氷の言葉通りに何も考えられなくなったその後も、私を苛む甘い時間は執拗に続いた。



end

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