novel 4

□Troublemaker
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「−−これだから男は…」
忌ま忌ましげに吐き捨てられた言葉に部屋の空気が凍り付く。

目安箱への投書を確認していた彼女は一通の投書を見るなり眉を寄せ件の台詞を発した訳だが、いったい何が書かれていたのかと覗き込む俺に、彼女はため息と共にその投書を差し出した。



「で、鮎沢が変質者退治ってわけ?」
「ああ。投書があった以上、放っては置けないだろう」
当たり前のように返された答えに、俺は彼女に聞こえないようにため息を吐く。

(それって、100%女の子の仕事じゃないよね)

きっと口に出しても聞いてもらえない台詞を飲み込んで、変質者とやらが出る公園へと二人で向かう。

「それじゃあ、申し訳ないが碓氷はどこかで時間を潰していてくれ」
彼女から出た言葉にギョッとして彼女の方を向くと、彼女はいかにも当然といった風で首を傾げる。
「当たり前だろう?男連れの女の前に、変質者が現れると思うか」
確かに尤もだが、どこの世界に自分の彼女を変質者が出るとわかっている場所で一人にさせる男がいるというのか。
譲ろうとしない彼女に、何かあったらすぐに俺を呼ぶ約束をさせて、結局は彼女の背中を見送ったのだった。
が…

『碓氷…?すまない、早く、来てくれ』

電話の向こうから聞こえる彼女の困惑した声に矢も盾もたまらず走り出した俺は、程なくして変質者と対峙する彼女の姿を見つけ、彼女の無事に胸を撫で下ろしながら側に駆け寄る。
「大丈夫?何もされてない?」
もし鮎沢に髪の毛一筋程の傷でも付けていたら目の前の男をただではおかない。
そう身構える俺に、彼女が声を潜めて返答する。
「ああ、私は大丈夫だ。それよりも…」
ちらりと男の方を見て彼女は更に声を落とす。
「アレは、大丈夫なのか?」
“アレ”と彼女が目配せする先に俺も視線を向けると、余り見て楽しいモノではない……いや、不快になるモノが垂れ下がっている。
「…大丈夫って?」
質問の意味が解らずにそのまま彼女に問い返すと、彼女は言いにくそうに言葉を続ける。
「何と言うか……その、大きさが…不自由じゃないか?」
最大限に気を遣った言いように俺がつい吹き出すと、彼女が慌てて俺を窘める。
「笑うな。人の身体的特徴を笑うなんて、失礼だろう」
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